守護の力を、破壊の力を 9章【暁のヨナ】

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ユリカside


遠い昔、神話の時代。
龍神は緋龍を守るため、人間の戦士に自らの血を与え、力をもたらした。

ある者は何をも引き裂く鋭い爪を、ある者は彼方まで見通す目を、ある者は天高く跳躍する足を。

ある者は傷つかない頑丈な体を………。


それが、今まで続く四龍の戦士の話。




ヨナ「神話の時代からの…龍…
龍神から血を賜ったという…？」


ゼノ「そんな事もあったっけな。
昔は俺も少し神様の声が聞けるくらいのただの小僧だったんだけど」


ユン「神の声が？」


ゼノ「そ、ボウズと姉ちゃんのとこの神官兄ちゃんと一緒」




イクスと同じ……
神様の声が聞こえるなんて…だからゼノは龍神に選ばれたのかしら。

龍神と呼ばれるからには、龍の神様だものね。
考えてみれば不思議なことではない。




ヨナ「ずっと…昔からその姿のままなの…？」


ゼノ「龍の血を飲んだ時からな。
不死の体を持つ者、それが黄龍だ」


キジャ「そなた里は…？
里はとっくに出たと申していたな？」


ゼノ「とっくに出たよ、生まれた里はな。
でももうそこに昔の面影はねェし、白龍の里や守護龍の里みたいな里の事言ってんならそんなもんはねェよ」




私たち龍の子孫にはそれぞれ里があった。
形はどうであれ、里は存在していた……
だけど、長い年月を生きたゼノにとっては…それは不要なものだったのかもしれない。

里で過ごす中で、自分だけ変わらないなんて苦しすぎるから。




ヨナ「なら…ずっと独りで…？」


ゼノ「あー…ゼノね、結婚してた時もあった」




…………結婚？




ハク「え…」


キジャ「けっこ…」


ジェハ「結婚…」




衝撃的な事を平然と言い放つものだから、私たちは一瞬思考を停止してしまった。
理解するのに時間がかかって、その言葉をただ繰り返してしまう。




ゼノ「長い人生、結婚する事くらいあるから」


ジェハ「そう…だね」


ゼノ「でも里はないから。
こんな体だから色んなところ巡って転々としてた。

たくさんの人々が、龍達が生まれて死んだ。
愚帝も賢帝も見て来た。
その中で……緋龍王の生まれ変わりが現れるのを、娘さんが現れるのを待ってたんだ」




珍しい赤い髪の少女。
それは緋龍王を彷彿とさせる。

ヨナが緋龍王の生まれ変わりであるのなら……
私たちがこうして集まったことも、天命と言えるのかもしれない。

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