守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ9)

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第7話ページ9

「理解したならお引き取り願おうか。
こう見えて私も暇じゃないんでね」

「何かあるの？」

「子供たちに手を出す阿保な輩がいないか見回り。
いたらぶった斬る」

「物騒だなぁ」

もう、何度と分からないほどリシスは子供たちに害をなす者どもを背負った剣で斬り刻んできた。

生きたきゃ武器を取らなければ。
見下されたくなければ強くなれ、そうしなければ満足に生活することもできない……今はそんな時代だった。

しかし…力のない子供は誰が守る。
力のある大人が守らなければこの国の未来は衰退して行くだけだ。

「私は、こうして苦しんでいる末端の人たちを見捨てるような王に興味はない」

「あいつは確かに盆暗な王だが、そんなことは……！」

「だが、これが現状だ」

リシスにそう言われれば、返す言葉もなかった。

この国にはまだ苦しんでいる人がいると、情報としては耳に入ってきていても……実際に見るのとではまた違う。
現状は想像よりも酷く、辛いものだ。

「……じゃあさ、リシスが変えればいいじゃん」

「は？」

「リシスはこの現状が気に入らないんだろ？
だけどここにとどまってるだけじゃ出来ることは限られている。なら……城に来て変える方がよくない？」

ハッと、目を見開く。
……それを、考えなかった訳ではないが、城に行ったところで何かができるとは到底思っていなかった。

何故なら、自分はただの平民だから。
龍の力を持ってはいるが…それ以外に、これと言った力のない無力な人間なのだ。

「……お前は、私にそんな力があると思うか？」

「力があるかどうかじゃない。結局はやるかやらないかだ。
リシスのやる気があれば…何だって出来るよ、きっと」

リシスの瞳が迷いに揺れる。

わかっている、このまま現状に満足してちゃいけないことは。でも…これ以上苦しむくらいなら、現状維持の方が良いのではないかと思う自分もいる。

守るものがあるというのは、とても苦しい。

「わかった。この国の子供たちが苦しむことなく暮らせるように俺から王に進言しよう。
そして、俺も最大限の努力をしよう。

だからお前は王に会うんだ」

「………そこは、"会ってください"じゃねぇの？」

ニヤリとリシスの口角が上がる。

驚きに目を見開くグエンを揶揄って楽しんでいる。
なんともタチの悪い女だと、グエンは思わずため息をついた。

「………わかったよ、会ってやるよお前らの王に。
だけど…私が仕えるべき王だと思えなければ、私はすぐに城を出てこの場所に戻る」