守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ8)

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第6話ページ8

緊迫した空気が流れ、今にも一触即発の雰囲気。
いつ、得物が飛び交ってもおかしくなかった。

「……おまえ、名前は？」

「あ？なんで教えなきゃなんねぇ。
そもそも人に名前を聞く時は自分から名乗るのが礼儀だろォが」

「！」

「あ〜！抑えて抑えて！
手を出したら負けだから！」

思わず龍の手を構えた白髪の男を、黄髪の男が宥める。
どうどうと宥めるその様子は、大型犬を宥めるように見えて……リシスは思わず口の端からふっと笑い声を漏らした。

すると、黄髪の男がリシスの方を向く。
ふと視線が交わり、リシスは少し肩を揺らした。

「俺はゼノ、この白いのがグエンで、青いのがアビ。
そんで緑のがシュテンだ」

「おまえ…紹介が雑なんだよ」

「悪ィ悪ィ、で…あんたの名前は？」

人に名を聞く時は自分から名乗るのが礼儀だと言ったのは紛れもなくリシスで、それは相手が名乗れば自分も名乗ると言っているようなものだ。

となれば、この状況で名乗らないわけにもいかない。
リシスは思わずため息をついた。

「……はぁ、リシスだ」

「リシスな、よろしく」

「私はよろしくしたかねぇよ」

もう何度目とわからないため息をつく。

こんな状況でもニコニコと笑うゼノと名乗った少年。
太陽のような笑顔が浮かぶのに、その笑顔はどこか掴みどころのない。
コイツが一番恐ろしい奴なんじゃないか、リシスは少し息を呑んだ。

「……城に行くのは、嫌なんだよな」

「あぁ、嫌だね」

「何で？」

「何でってそりゃ、誰かに仕えるとかめんどくせぇし。
私は自由気ままに生きられりゃそれでいい」

「んー……でもな、俺らは守護龍と破壊龍を連れてきて欲しいって王様に頼まれてるし」

「連れて帰らねぇとあの盆暗王が悲しむだろ」

「勝手に悲しんでろ」

「……口悪い」

「……お前もさっきから大概だぞ」

繰り広げられる口論。
どちらも、一向に引き下がる様子はなかった。

「それに……私がここからいなくなれば、子供たちが生きていけない。子供に手を差し伸べる大人のいないここで、あいつらが生きていくのは難しいんだ」

リシスが子供たちの去って行った方を見つめる。

リシスは子供たちに食料を与え、子供たちに害をなす先程のような輩を排除してきた。
未来を担う子供たちのために、リシスにできるのはそれくらいだったから。

「私が城に行きたくない理由には十分だろ」

そう言われてしまえば、返す言葉もない。
面倒くさいから、とそれだけの理由だったならまだ無理矢理連れて行きやすかったのに……