守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ6)

今日:18 hit、昨日:2 hit、合計:7,310 hit

第4話ページ6

「リシス姉ちゃん！大丈夫!?」

「ん？あぁ、あんな奴ら相手にならねぇよ。
それより怪我した奴がいるんだよな、そいつは？」

「……。」

駆け寄ってきた子供の頭を綺麗な方の手で撫でれば、子供は少し先の方を指さした。
そこには何人かの子供が群がっていて、その隙間から倒れている子供が見えた。

地面に血が滲み、苦しそうな表情が目に映る。

まだ小さな子が何故こんな目に。
悔しくて、悔しくてたまらなくて…リシスは思わず手をぐっと握った。

「おい、大丈夫か？」

「っ、」

目が僅かに開く。
虚ろな目はリシスを捉えることなく、空を彷徨っている。
それでも生きていることに安堵し息を吐き出すと、リシスはそっと目の前の子供の手を握る。

そして心配そうに見つめる子供たちに離れるよう促した。

「守護龍の加護を」

ぽつりと呟く。
それは、周りの誰も聞き取れないほどの小さな声だった。

そして、握った手から光が溢れていく。
思わず目を瞑ってしまいそうなほど眩しい光がこの場を支配し…やがて子供の傷を癒していく。

これこそが龍神より賜りし能力(ちから)。
全てを守るとされる守護龍の、傷を癒す力。
元々は緋龍王を守るために授けた力なのだろうが、リシスはそんなこと気にも止めなかった。

ただ、目の前の者を救えればそれでいい。
こんな力を与えて緋龍王を守れと言う龍神には心底腹が立つが、使えるものは使ってやる。
子供を握る手に思わず力がこもった。

「リシス…姉ちゃん……」

「おう、気分はどうだ？」

子供の瞳がはっきりと開かれ、リシスを映す。
光の灯ったその瞳を見れば胸を撫で下ろした。

気づけば手から溢れた光も収束し、辺りはいつも通りの光景を取り戻した。

「もう大丈夫だよ！
リシス姉ちゃんって凄いね！何今の！」

「はっ、すっかり元気だな。
あんな血だらけだったくせに…ま、何よりだよ」

はぐらかすようにリシスは子供の頭を撫でる。

その時、背後から聞こえた足音にリシスは動きを止めた。
ゆっくりと振り向けば、そこにいたのは白、青、緑、黄色と何とも色とりどりの髪色をした男たち。

賑やかな髪色の奴らだな、とリシスはぼーっと男たちを見据えて考える。
そして男たちと視線が交わると、リシスは顔を顰めた。
警戒心を強め、子供たちを背に隠す。

「お前が守護龍だな」

「……あ？誰だテメェら」

鋭く細められたリシスの瞳が男たちを捉える。
銀色の髪が風に靡き、辺りが張り詰めた空気で満たされた。