守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ46)

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第44話【終章:次代の龍たち】ページ46

ふと空を見上げれば風が吹き、銀色の髪が靡く。
何だか、懐かしいような…悲しいような、そんな感覚に陥り首を傾げた。

「A？どうしたの？」

「……ううん、」

何でもない、そう言うと目を逸らして少し先で自分を待つ仲間たちを追いかける。
タッタッ、と軽い足音が響き…彼女の羽織る外套がふわりと広がった。

「空なんか見上げてどうした？
うまそうな鳥でもいたか？」

「いや…別にお腹が空いてるわけじゃないのよ」

「ゼノはお腹空いたから〜」

「さっき食べたばっかじゃんか！」

間の抜けたやり取りに、思わず笑う。

「ふふ、今日の夕食は何かしらね」

「肉〜」

「え、さっき朝ごはん食べたばっかなのにもう夕食の話!?」

「よし、では今夜は私が熊を狩ってくるぞ！熊鍋だ！」

「私も行く！」

「姫さんはダメですよ、留守番です」

「え〜…」

まだ日は高く、空も青い。
それなのに今日の夕食に思いを馳せる。
目を閉じればみんなで騒ぎながら鍋を囲む様子が安易に想像できた。

「ほんと、若者は元気で羨ましいよ」

「ジェハはおじいちゃんみたいね」

「……お兄さんって言ってくれないかな、そこは」

「あらごめんなさい、お兄さん」

「……Aちゃん、君って子は」

ヤレヤレと、ジェハが額を抑える。
その様子を見てAはどこか楽しそうに笑うものだから……ジェハも笑うしかなかった。

「……あそこ、熊…いる」

「なんと！絶好のタイミング！
お待ちください姫様、私が熊を仕留めて参りますので！」

「ゼノもゼノも〜」

「一旦落ち着け珍獣共!!!!」

今日も、賑やかだ。
それがとても心地よい、もう…仲間のいない生活など考えられないだろう。
目の前の光景を見つめ、Aはまた笑った。

それは……何千年も前の、神話の時代に集った龍たちを彷彿とさせる光景であった。

「守れないのなら、この力に意味はない。
大切な人を失った悲しみは…いつまでも残る。
……おまえは、私の二の舞にだけはなるなよ」

「！」

声が聞こえた気がして…ハッと、振り向く。
ふわりと風に靡く銀色の髪が見えた気がした。