守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ43)

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第41話ページ43

「おい、何勝手に決めてやがる」

民の前から退けば、ジロリとリシスの鋭く細められた目がゼノを捉える。
その瞳からは、明らかに怒りの色が窺えた。

「……ずっと前から、考えてたんだ。
俺たちがこの城を出て行くべきなのかもしれない、って話が出た時から」

「……。」

「出て行くと言っても、そう簡単にはいかねぇだろ。
この国の現状を考えたら、城の奴らがすんなり受け入れられるはずがない。
だったら、非力だけど俺が残ればお前らは安心して出ていける」

がっ、とリシスがゼノの胸ぐらを掴む。

その表情は怒りの感情を示しているように見えて……どこか、悔しさを滲ませた表情のように見えた。
胸ぐらを掴む手が、微かに震えている。

「んな、お前が犠牲になるこたぁねぇだろ」

「犠牲だなんて思ってないよ。
俺が…そうしたかったんだ、ただそれだけだ」

「お前な……！」

そこまでだ、そう言うようにグエンがゼノとリシスを引き離す。
ゼノは俯き、リシスはゼノを睨み続けた。
しかし…その目からは、今にも涙が溢れ出しそうだった。

「坊主、守護龍の言いたいこともわかるだろ」

「……あぁ」

「そもそも何で俺らに相談しなかった。
あんな重要なこと一人で決めやがって」

「だって、相談したら絶対反対するだろお前ら」

まさに、その通りだった。

リシスの言った通り…ゼノが犠牲になる必要などない。
彼らは、ゼノにも自由に生きて欲しかったし、ゼノだけに辛く重い責任を押し付けたくはなかった。
……それは、ゼノもまたよく分かっていた。

「………本当に、残るつもりかよゼノ」

リシスが小さな、消え入りそうな声で問う。
あまりにしおらしい、いつもの彼女らしくない様子に思わずゼノはふっと口の端から笑い声を漏らす。

「うん、残るよ。
だって…今はそれが一番だから」

その言葉に、リシスは俯く。
そしてゆっくりとゼノに近づくと……ピン、とその額を指で弾いた。

驚きに額を抑えれば、リシスは"バーカ"といつも通りの様子で笑う。
それが……何だかおかしくて。

「ははっ、」

目を細めて笑う。
ここには…龍たちの、確かな絆があった。

別れまで、あと数日。
皆が、それぞれの道を歩み始めることとなる。

どうか、その日を笑顔で迎えられるよう……
ゼノは胸が締め付けられるようなその感情を、そっと心の内にしまい込んだ。