守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ41)

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第39話ページ41

廟から出れば、他の龍たちが待っていた。
誰もがアビを心配していたのだ。

「青龍は？」

「……まだ、気持ちの整理がつかねぇだろうな。
だが…きっと大丈夫だ、あいつなら乗り越えるだろうよ」

この城に来てから、長い時間を共に過ごしてきた。
だからこそ分かる。
彼はきっと乗り越え、この先の未来を歩いていけると。

「そうだ、お前らにも伝えとかなきゃな」

ふと思い立ったように言うリシスに、首を傾げる。

ずっと…伝えられなかった言葉。
すぐに伝えなければと分かってはいながらも、深い悲しみの中にいたあの時は……とても、口にできる状態ではなかった。

「"みんな、仲良く"…だとさ。
緋龍王が、私たちに遺した言葉だ」

伝えれば、3人はアビと同じように目を見開いた。
あまりに見覚えのある光景に、リシスはふっと口の端から笑い声を漏らす。

「……最後まで、俺たちの心配かよ」

「王様らしいじゃん」

そう、とってもあいつらしい。
自分の生き様を貫き通し、それでいて自分たちのことを想い考えてくれていた。
彼はどこまでも気高き王だった。

亡くなってもなお、それを痛感する。

「あいつが死んでから、ずっと考えててさ。
なんで救えなかったんだろうとか、私は本当に出来ること全てをやったのか…とかさ。

でも答えなんか出なくて、今も胸のどっかで支えてる」

胸に手を当て、その拳を握る。

悲しみは消えない、後悔も…きっと消えない。
なぜ助けられなかったのかと、これからも過去を悔いるだろう。
それでも、前を向こうと思えたのは……

「でも、私らが笑ってなきゃあいつが悲しむだろ」

へらっ、と笑ってみせる。

そう、いつだって自分たちを気にかけた緋龍王の姿が思い起こされるから…だからこそ、前を向かなければと思うことができた。
いつまでも泣いてばかりいられない。

「そうだ、ゼノ」

「ん？」

「ありがとな」

突然お礼を言われたかと思えば、くしゃりと少し乱暴に頭を撫でられ目を丸くする。
そんなゼノの様子を見ながら、リシスはくつくつと喉を鳴らして笑った。

「あん時、止めてくれたろ？私のこと。
正直なところ何があったかあんまし覚えてねぇが…ゼノの声だけははっきりと聞こえたんだ」

「リシス……」

「だから、ありがとな」

彼女の心からの笑顔を見たのはいつぶりだったか。
きゅっ、と胸が締め付けられる感覚がした。

……あぁ、生きていてよかった。

目の前で笑う彼女を前に、ゼノはほっと胸を撫で下ろし…同じように笑った。