守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ33)

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第31話ページ33

「リシス、お前は優しい人だ。
そんなお前にだからこそ…龍神たちはその力を与えたんだろう」

途切れ途切れになりながらも、緋龍王は言葉を紡ぐ。
それはまるで遺言を語るようで、聞きたくないと耳を塞いでしまいたかった。

どうか、何も言わないでくれ。
これ以上…苦しめないでくれ、涙が溢れてしまいそうだった。

「今となっては、苦しいだけだよ…こんな力」

「はは…そうかも、しれないね」

力なく微笑む。
その姿が、苦しくてたまらなかった。

「私が死んだからといって悲しむことはない。
誰もがいつかは死に、天に還る。
私は…それが今だというだけの話だ」

「死ぬな！私が絶対、治してみせっから！」

「リシス」

はっと、目を見開く。

……もう会えないなんて、寂しくて。
死んでほしくなくて、生きてほしくて。
どれだけ思っても、力が通用しないのなら…もう出来ることは何もない。

自分は無力だと、突きつけられているようだった。
元は龍神という神の力だったのかもしれないが、自分という人間が使う以上…限界はある。

それは……自分で言ったんじゃないか。
それでも、この力が神の力であったならと、今は願わずにはいられない。

「お前は、大丈夫だ」

「っ、！」

何がだ。

全然大丈夫なんかじゃない。
アンタがいなくなって大丈夫な人なんて……この城には一人もいないんだ。
しかし、何を口にしようとも…もう、出来ることはない。

「みんな、仲良くな」

緋龍王の口から紡がれる最後の言葉。
頬に触れていた手が、するりと滑る。

「緋龍王!!!!」

ぽたりと涙が溢れ、地面に落ちる。
緋龍王の手もまた…力なく、地面に落ちていった。

.

緋龍王は眠りについた。
龍の戦士たちはもう動かない王を想い泣いた。
大切な人を失った悲しみなのか、自身の中にある龍神の血が緋龍の死を悲しんでいるのか、彼らにはわからなかった。