守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ32)

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第30話ページ32

そうして龍たちと共に、リシスは適度な休暇を挟みつつ王の治療にあたった。

そして……数日が過ぎたある日。
リシスが王の寝室を尋ねれば、苦しげな呼吸を繰り返す緋龍王が目に入る。
慌てて駆け寄り治癒を施すも…もう、意味をなさなかった。

「どうして……っ、」

「リシス…もう、いいよ」

「よくない！絶対に助ける…私は、アイツらにそう約束したんだ」

苦しげな呼吸を繰り返しながら、いつものように優しい目がリシスを捉える。
そして、痩せ細った腕が力なく伸ばされリシスの頬に触れた。

「リシスを…ここに連れてくるべきじゃ、なかった」

それがどんな意味かは、リシスが一番よく分かっていた。
決して、突き放すような冷たい言葉ではなく……リシスを思うからこその言葉だと言うことを。

いつも笑顔を浮かべる彼女の涙など…見たくはなかったと、緋龍王は思わずにはいられなかった。

「っ……そうだな、あんたが私をここに連れてくるよう言わなければ、こんな悲しい思いをしなくて済んだ。ここに来なければ……仲間の温かさを知らずに済んだのに……」

ぽたり、涙が溢れる。
温かな涙が、彼女の頬に触れる緋龍王の手に伝う。

「私はこんな力いらなかった。
誰かのために生きようなんて思ってなかったし、名前も顔も知らない王に仕える気なんて…更々なかったんだ」

龍神が目の前に現れ、半ば無理矢理その力を授けていった。
あの時は…激怒したものだ。
龍神というのは何と自分勝手なのかと。

「でも今は…アンタに出会えて、アイツらに出会えて……本当に良かったと思ってる。
アンタらは、私にとって心を許せる大切な仲間だ。
初めて…そう思えたんだ」

出会いは最悪、第一印象も最悪。
それでも今は…大切な仲間だと、心の底からそう思っていた。

この城に来て…リシスは変わった。

「だからこそ、私は誰も失いたくない。
大切な人を助けられないで、この力に何の意味があるって言うんだ！守護龍なんて名ばかりで…私は、何も守れてない……っ、」

涙で視界が滲む。
口から出た言葉は、全てリシスの本心だった。