守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ27)

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第25話ページ27

「ったく、いい加減にしろよお前」

「あはは…」

……じろり。
鋭い瞳で睨みつけながら、リシスは緋龍王に顔を近づける。

彼女が怒っていることなど一目瞭然。
王を目の前に"お前"というのだから、その怒り具合が伺えた。
それには緋龍王も苦笑いをこぼすばかり。

「今日は大丈夫って言ったくせに倒れるとか……
いい大人が体調管理すら出来ねぇのかよ。
いっそ、王専属の医務官を作った方がいいんじゃねぇの？」

「リシス、それは……」

「あ゛？」

「……すみません」

リシスの圧に思わず緋龍王すら言葉を飲み込む。
その後ろではグエンも苦笑いをこぼしていた。

そして、リシスが緋龍王の方へと手をかざせば光が溢れる。
ほぅ…といつもと変わらず眩しく、温かな光が収束すれば、リシスは一つ息を吐いた。

「今日はもう休め。
んな青白い顔してるお前にできる仕事はねぇから」

「しかし…」

「守護龍の言う通りだ。
王よ、後のことは俺たちが」

それでも尚、納得いかないと言いたげな表情を浮かべる。

この王は頑固だ。
自分がやると決めたことは絶対に曲げない。
しかし……今の状態では王に折れてもらうほかない。

リシスは緋龍王の肩にトン…と触れると、少しばかり痩せたようにも思えるその体を布団に押し倒す。
驚きに見開かれた緋龍王の瞳には、揺れる銀髪とリシスの青い瞳が映っていた。

「王様相手に無礼だとは思うが……
あんたが譲らないってんなら、こっちも強硬手段にでるしかねぇよな」

「おい、守護龍…」

「黙ってろ」

驚くグエンを制止すれば、直ぐに緋龍王へと視線を戻す。

リシスの表情は険しい。
いつも笑っている彼女のあまり見ない表情に、緋龍王は焦りを隠せない。
王としてはあまりに情けないその姿を見て、リシスは口の端から笑い声を漏らす。
そして、軽く緋龍王の額を弾くと、ケラケラと笑いながら身体を引いた。

「あっはは、冗談だよ。
強硬手段って言ったって、あんたに寝てもらうくらいしか体調を回復する方法はないんだから。

……いいか？
あんたの仕事は、ゆっくり休むことだ。
んで…本当に元気になったらこの国のために働いてくれ」

じゃあ、あとは頼む。
グエンにそう言い残すとリシスは部屋をあとにした。

そして…部屋から数歩離れたところで足を止め、振り返る。

「………。」

何を言うわけでもなく緋龍王の部屋をしばらく見つめると、ぎゅっと拳を握ってまた歩き出した。
その時垣間見えたリシスの表情は、とても険しいものだった。