守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ25)

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第23話【7章:隠された真実】ページ25

緋龍王は倒れ、自室に運ばれた。

それからというもの、すぐさまリシスは治療を続け…緋龍王を治すことに全力を注ぐ。
緋龍王の自室はしばらく、眩いほどの光に包まれていた。

「守護龍！緋龍王は！」

光が収まり、やがてリシスが部屋から出て来る。
四龍たちは慌てて駆け寄り、緋龍王の現状を問いただした。

「……今のとこ、平気そうだ。
顔色も良くなってるし、呼吸も安定してる」

「そう、か……」

大事には至らなかったことに安堵する。

緋龍王が目の前で倒れた時、このまま死んでしまうのではないかと……誰もが最悪の事態を想定した。
だからこそ、それだけは避けようとリシスはただひたすらに力を込め…王に加護を与え続けた。

その証拠に、普段は涼しい顔で治療をこなすリシスの額に汗が滲んでいた。

「でも、何でいきなり」

「……医務官曰く、おそらく疲労だとのことだ。
ここ最近戦も多かったからな、より一層疲れが溜まってんだろ」

「だが、まさかそこまでとは……」

「ま、休めば回復するだろうってさ」

治療をしていたというわりには、どこか他人の言葉を伝えるかのような物言いだった。

それもそのはず。
リシスは治癒の力を持つ龍であっても、医学に対する専門的な知識はない。だからこそ、緋龍王の傷を無くし、疲れを取り除けたとしても…その原因が何なのかはわからないのだ。

「何はともあれ、これ以上王に無理はさせられない。
俺らが気にかけていかねぇと…」

「あの盆暗王はすぐ無理するからな。
そもそも王自ら戦場に出る必要もねぇってのに」

「でもそれがあの王だから」

アビの言葉に"違いない"と笑う。

そんな王だから龍たちはここに集い、力を奮い、その側で彼を支えたいと願った。
たとえその思いが龍の血によるものだとしても…もう、どうでもいいと思えるほどに。

「……リシス？」

「…ん、あ？」

どこかぼーっと、遠くを見ているリシスの顔をゼノが覗き込む。すると、驚いたように目が見開かれた。

パチパチと目が瞬き、ふわりと銀色の髪が揺れる。
リシスにしては珍しい様子に、ゼノは首を傾げた。

「……大丈夫？」

「……それ、こっちの台詞だぞ。
さっきよりは幾分かマシになったが…まだ暗い顔してる」

リシスの言葉に、ゼノはハッとして自身の顔に触れる。

「緋龍王を見舞いに行くならその顔をどうにかしてからにしろよ。病人に暗い顔は毒だ」

ひらひらと手を振り、リシスは笑ってこの場を去っていく。
いつも通りのはずのその笑顔が、何故だかぎこちなく見えた。