守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ24)

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第22話ページ24

「怪我の具合はどうだ？」

「！緋龍王」

リシスの話により、少し空気の重くなった部屋に緋龍王が姿を現す。

"見ての通りだよ"、とリシスがグエンたちを指差せば、"さすがリシスだね"、と緋龍王は全く傷が残っていない様子を見て笑った。

「こいつら戦に行きゃ怪我してくんだろ？
大勢の兵を治す私の身にもなれってんだ」

「別に俺はお前になんか治してもらわなくても平気だがな」

シュテンがリシスを小馬鹿にするように笑う。
それに少し顔を顰めたリシスだったが、すぐに口角を上げて悪戯っ子のように笑う。
そして、組んだ足の上に肘をつき頬杖をついた。

「んなこと言ってっと、本当に死にそうな時に助けてやんねぇぞ。そん時困るのはお前だからな」

「んだと!!?」

「お、久々に手合わせでもするか？
今は私の何連勝だっけ？勝ちすぎて覚えてねぇや」

リシスはシュテンを揶揄いながら笑う。

睨み合い、言い合う二人はいつも通りの光景。
グエンもアビも、ふっと笑みをこぼした。

すると、同じように笑っていた緋龍王の視線がふとゼノに向けられる。

ゼノは…戦場から戻ってきてからというもの、何かを考え込み…何かに怯えた様子で一言も発しない。
何かあったのだと察することは容易かったが、あまりにいつもと違う様子で…他の龍たちは声をかけることが憚られた。

あの太陽のような笑顔が、今はどこにもない。

「ゼノ？」

「さっきからどうしたよ、怪我でもしたのか？
ったく、どいつもこいつも怪我ばっかしやがって…」

診せてみろ、そう言ってリシスがゼノの前に立つ。
しかし、ゼノはぎゅっと腕を掴み、俯いたまま動こうとしない。
心なしか、その体は震えているように見える。

「……ゼノ？」

緋龍王が、ゼノへと手を伸ばす。
しかし……その手が、途中で止まった。

その様子を不思議に思い、龍たちの視線が緋龍王へと向けられる。
そして……

「！」

バタン、大きな音がした。
緋龍王が胸を押さえながら、苦しげに地面に倒れた。

突然のことに目を見開き、しばらく誰もが動けなかった。
しかしすぐにハッとして、その場にいた全員が緋龍王へと駆け寄った。

「緋龍王！」

「王様!!」

「っ、誰でもいい！医務官を呼んで来い!!早く!!!!」

リシスの声に弾かれるように、グエンが部屋を飛び出す。

緋龍王の顔は苦痛からか歪められ、額には汗が伝っている。
リシスがぐっと手に力を込めれば、この部屋を眩いほどの光が支配した。