守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ22)

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第20話ページ22

ぽたり、雨粒が頬に落ちる。
それを煩わしそうに払うも…雨の勢いは増すばかりで、あっという間にずぶ濡れになってしまった。

服が水を吸って重い。
前髪をかき分ければ、少しばかり視界が開けた。

「また来るぞ」

「く…っそ」

ここは戦場、敵は絶え間なく襲ってくる。

いくら龍の血を持つ者といえど、所詮は人の子。
息は切れ…疲労が体に襲いかかる。
全員、消耗が激しいのは明白だった。

「ボウズ、青龍を連れて後方へ」

麻痺返しで体が麻痺してしまい動けないアビをゼノに預け、下がるようにグエンは促す。

しかし、アビの体を支えつつもその足はなかなか動かない。
この戦場において、まだ皆は戦っている。
それなのに、自分だけ退いていいのか。
龍の力を持つ自分が…本当に退いてもいいものか。

「お前が傷つくとあの盆暗王が泣くだろーが!!」

「さっさと行きな、私らはまだまだ元気。
心配しなくてもよゆーだっての」

リシスは剣を構えていつも通りの笑顔を浮かべる。
だから安心しろ、そんな言葉が聞こえてくるようだった。

王様は…お前らが傷ついても悲しむよ。
心の中で呟けば…ぐっと、アビを支える手に力がこもる。

やがてゼノは意を決し、アビを連れて後ろへと下がる。
それを見たリシスは、静かに口角を上げた。

「守護龍サンの力で青龍を治してやれば良かったんじゃねぇの？」

「そうしたいのは山々なんだがなァ、生憎ここを制圧するためには守護龍の力なんか使ってる場合じゃねェんだよ」

守護龍の力を使えば、麻痺を取り除くなんて簡単なこと。
しかし…そうすればまたアビは無茶をするだろう。
それはリシスの本意ではなかった。

治さないというのも…また、リシスの優しさなのだ。

ふっと口元に笑みを湛えると、リシスはスタスタと軽い足取りで敵の方へと歩いていく。
グエンとシュテンが思わず止めるが、大丈夫だとリシスは笑った。

確かに彼女は強い、それをグエンもシュテンも知っていた。
それでも……一人で敵の前に立つなど、何て無謀なことか。
……それに、彼女も疲れていないわけではないだろう。

「守るだけじゃ意味ねェってことだ。
ったく戦争なんてめんどくせぇだけだな」

ギュッと、剣を握りしめる。
一人でノコノコと歩いてくるリシスを前に、敵は好機だと言わんばかりに剣を振り上げた。

「私は守り、壊す者だ。
守護を破壊を、矛盾の力を……ってな」

次の瞬間、リシスの髪がすっと黒く染まる。
そしてリシスが敵を睨みつければ……敵は瞬く間に血を吐いて倒れていった。