守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ21)

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第19話ページ21

「黄龍の能力、傷の治りが早いだけ？」

「それじゃ戦力にならねーよ」

「いーんだ、人を傷つける能力なんて。
俺はこのくらいの能力がいい、なあ王様」

同意を求めてゼノが緋龍王の方を振り向くと、緋龍王はギュッとゼノに抱きついた。
何かと思い、ゼノは目を丸くする。
もちろん、他の龍たちも驚きに目を見開いていた。

……やがて緋龍王はゼノから離れると、首飾りを外してそれをゼノの手に置いた。

「私が地上に降りた時、龍達から賜ったものだ。
お前に授けよう。私は常に、お前と共に在るという証だ」

その様子を、後ろで他の4人がじーっとゼノの手に置かれた首飾り見つめる。
その視線に気づいた緋龍王はくるりと4人の方を向いた。

「こいつにだけか？」

「俺」

「…俺に…」

「あ、一個しかない」

その言葉に3人は相当ショックを受けたらしい。
隣では"我儘言うんじゃねぇよ！"と笑いながらリシスが腹を抱える。
ほんと、緋龍王が好きだな。
目尻にうっすらと涙を浮かべながらリシスは思う。

かくいう自分も人のことは言えないが。
彼らほどではないがリシスもまた緋龍王を大切に思っていて……この城に来る前のような嫌悪感はもう既になかった。

「欲しかった？」

「いらねーよ！別にいらねーよ！
守護龍も笑ってんじゃねーっ！」

「あっはは！滑稽だな！」

龍の戦士たちは、特別仲が良いわけじゃなかった。
それもそのはず、元々は赤の他人で…なおかつリシスと四龍の出会いは決して良いものとは言えなかったから。

それでも緋龍王がいれば繋がっている……そんな気がしていた。

「王！北方の豪族が我が地に侵入を…」

「王よ、ここは俺に。即鎮めて参ります」

城の者が緊急事態を告げる。

この頃の緋龍王と四龍の部族は周辺の乱を次々と平定し、高華国の領土を大きく広げた。
戦の絶えない中で…龍の力を持つ誰もが、この国の要であった。

「青龍サンはまた倒れに行くんだろ」

「うるさい、次は踏ん張る」

「いっそ寝てろ、俺が全軍相手しとくわ」

「いいねェ、たまには私も出陣するか」

「やめとけよ、戦場は弱い女が行くような場所じゃねェだろ」

「その弱い女に一向に勝てない奴は誰だったかなァ」

「うっせ、次は勝つ！」

「あっはは、いつでもかかってこい。
私の連勝記録が伸びるだけだからなァ」

リシスが馬鹿にするように笑えば、シュテンの怒鳴り声がこの場に響く。とても賑やかなで…温かく、平穏に満ちたこの場所。

……しかし、平穏など一瞬で戦は終わらないのだ。