守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ18)

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第16話ページ18

「……何でずっと黙ってんの？」

驚きに目を見開く龍たちを前に、怪奇の表情を浮かべる。
いつもはうるさいくらいなのに、今は特段静かだ。
リシスの口から、思わず"気持ち悪ィ"と本音が漏れた。

「きっと、守護龍の力がすごいから驚いてんだよ」

「あ？」

リシスの横で、ゼノが楽しそうに笑う。

ゼノは以前、既に守護龍の力を見ていたからか…そこまで驚いた様子はなかった。
しかし、彼も初めて見た時は他の龍たちと同じような反応をしていた。

「治癒の力があるとは知っていたが…まさかここまでとは」

「傷、なくなった」

「守護龍の力は、強ぇな」

「……まぁな、この力だけは最高だよ」

ニッ、と口角が上げられる。

リシスは龍神から龍の血を賜ったことを、他の龍たちと違い良く思っていなかった。
しかし…この力で誰かを救えるのなら。
緋龍王のために力を使うのは癪だが、出来る限りのことはしてやろうと思った。

「このくらいの怪我ならな、いくらでも治してやる。
だが…失ったものを戻すことはできねェし、死んだ奴を生き返らせることもできねェ。

この力は神の力だ何だと言われるが、そんなんじゃねぇ。
元は龍神という神の力だったのかもしれないが、私という人間が使う以上…限界はあるんだ」

ぐっと、拳が握られる。

リシスがこの城に足を踏み入れてからしばらく経つが、彼女は…口は悪いが優しい人なのだろうと思う。
初めて会った時も子供達を気にかけ…守ろうとする姿が印象的だった。

だからこそ、治せない患者を前に感じる痛みも人一倍なのだろう。
悔しさを滲ませるリシスを前に、心苦しい思いだった。

「……それでも、リシスに救われた命はあるよ」

「当たり前だろ、ここに来てから私がどれだけの奴らを治してきたと思ってんだ。
おかげで毎日ヘトヘトだよ、本当」

ガシガシ、と頭をかく。
しかし、疲れたと言うわりにはその顔に疲れの色が浮かぶ様子はない。むしろ、いつも通りに見える。

ちぐはぐな様子に、思わず笑みが溢れる。

「それにさ、たまには剣を握って鍛錬しねぇと体が鈍っちまうってのに…」

ここに来てから治癒しかしてねぇよ。
そう言い放ったリシスの顔が顰められる。

「そっか、リシスは剣を使えるんだっけ」

「まーな、それなりに自信はある」

「ほー、じゃあ手合わせしてみるか？」

ガン、シュテンが槍を床に突き立てる。
すると、リシスは楽しそうに口角を上げた。

「いいねぇ、受けて立つ」

それは、この城に来てから初めて見るほどの…嬉々とした表情だった。