守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ16)

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第14話ページ16

「ん〜……っ、」

治療もひと段落し、リシスはぐーっと伸びをする。
凝り固まった肩をほぐすためにぐるりと回せば、ゴキッと嫌な音がして思わず顔を顰めた。

龍神に血を与えられてからこれほどまでに力を使ったことはなかった。だから致し方ない事ではあると思うが……
今日はゆっくり休もう、リシスは心に決めた。

「リシス」

「！緋龍王」

部屋から出れば、待ってましたと言わんばかりに緋龍王がリシスへと声をかける。
優しげな笑みを浮かべながらこちらへと手を振る様子は、何度見ても見慣れるものではない。

……軟弱と言ったことは詫びようと思ったが、この国は本当にこの王で大丈夫なのかという思いは消えていなかった。

「あんなに大勢の治癒は大変だろう？」

「……大変じゃねぇって言うと嘘になるな。
だが、人に頼られるのは嫌いじゃねぇ。度が過ぎなければだがな」

「ふふ、そうだね。私も同じだ」

頼られる、ということは居場所を与えられているようで嬉しくもある。
そして…頼られた分だけそれに応えなければ、と一種の使命感のようなものも湧いてくる。

「……どうだい、この城は」

「え？あー…まぁ、快適だよ。
快適すぎて…申し訳なくなるほどにね」

そう、ここは居心地が良すぎる。
何一つ不自由がないと言っても過言ではないこの城で過ごすことは……今も生きることに精一杯の人たちを思うと申し訳なく感じることも多い。

それを仕方のないこと…で割り切ってしまうにはあまりにも苦しい。

「私は、この国をこの城のように快適で…過ごしやすい場所にしたいと思っている。
永遠の平穏を…この国でつくりたいんだ」

「……平穏、ね」

「そのためには…目の前の人から手を差し伸べなくては。
今のリシスのようにね」

緋龍王は笑う。
その笑顔の裏に…大層な理想を掲げているものだと思う。

城に来たその日から、この王の志は立派だと思っていた。
それが実現できるかどうかはまた別の話だが……
少なくとも、そんな国が見てみたいと思ったのは事実だった。

この王がこの国をより良くしてくれるのなら、リシスもここに来た甲斐があるというものだ。

「この国の未来なんて、そんな大層なもの私には見据えられないが……目の前にいる奴を放っておけねぇってのは私の性分だよ」

「……そんなリシスだから、龍神たちは血を与えたんだろうね」

「まったく、良い迷惑だよほんと」