守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ13)

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第11話ページ13

「なるほど、龍神たちの好きそうな子だ」

「……。」

一頻り笑った後、緋龍王はふっと目を細める。

何かを懐かしむように。
そして、リシスを通して別の何かを見るように。
優しげな視線だが…リシスにとってはあまり気分の良いものでなく、すぐに目を背けた。

すると…何を思ったか、緋龍王はリシスの頭を撫でた。
驚きに肩が跳ねる。
そして、大きく見開かれた瞳が戸惑いに揺れた。

「リシス」

「！」

穏やかな声なのに。
有無を言わせぬような何かを持った声。
リシスは目を見開いたまま動けなくなった。

……なるほど、軟弱と言ったのは詫びようではないか。

「確かに、この国はとてもじゃないが良い国とは言えない。
それは…私もよく分っている。
戦はなくならず、傷つく者が大勢いる。
そして……被害を被るのはいつだって力のない民だ」

「ほぅ、よく分かってんじゃねぇか」

「だからこそ、黙っているわけにはいかない」

緋龍王がこの地に降り立ってから、幾度となく戦が起こり…その度に多くの者が傷ついた。
そして、その姿を嫌というほど見てきた。

だからこそ……それを見なかったことにはできないし、自分の無力さを嘆いて立ち止まっていたくもない。

「私はね、戦のない世を目指しているんだ。
……夢物語かもしれないけれど」

どこか自嘲気味に笑う。

その姿を見て、リシスはふっと口の端から笑声を漏らした。
何だ、この王も自分と同じじゃないか。
自分の無力さに打ちひしがられ、それでもどうにかしようと足掻く。何とも滑稽で……だけど、そんな人の方が信用できる。

「あんた、王様向いてねぇよ」

「！」

「どーせあれだろ？
困ってる奴は放っておけねぇ質。
んな誰彼構わず助けてりゃ、この世の中は変えられねぇよ」

「……。」

「けど、理想が高いとこは気に入った」

すっと、リシスは口角を上げる。

この王は、明確な理想を持ち…それを成すためなら自ら戦場に立つのだろう。
それを賢明だとは言えないが……簡単に人を見捨て自身の目的を果たそうとする王よりも…馬鹿みたいに手の届くもの全員を救おうとする王の方が好ましい。

そしてきっと…目指すところは同じなのだろう。

「ま、せっかくここまで来たんだし…これからどうするかはゆっくり決めるとするよ」

どこか悪戯っ子のようにリシスは笑う。
その様子を見て、緋龍王もまたつられるように笑った。