守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ12)

今日:26 hit、昨日:2 hit、合計:7,318 hit

第10話ページ12

「一応って」

「一応は一応だ。
私は別に、この国の王に仕える気なんて更々ねぇんだから」

それは、リシスが四龍と出会ってからずっと言っていた事。
しかし、それをまさか王の前でも言うとは思っていなかったし、言ったとしてもこんな直球で言うとは思っていなかった。

……まさに、面倒なのが来たとも言いたげな表情を四龍たちは浮かべていた。

「なぁ、王様。
あんたは…四龍と共に、この国をどうしたいんだ？」

「………。」

口を開いたかと思えば、真剣な瞳が緋龍王を射抜く。
緋龍王は目を丸くし、リシスの目をただ見つめる。

驚いたまま固まり、何も言わない王。
そんな王を前にリシスは一つため息をつくと、腰に手を当てまた口を開いた。

「私は、貧しい村の生まれだ。
食料はなく、荒れた土地では綺麗な水すらない。
だけど私は恵まれた方で…野草や木の実を見つける術を身につけられたし、旅の者から剣を教わって自分の身を守ることもできた」

そうやって、今日まで生き延びてきた。
龍の力なんてなくとも…リシスは命を繋ぎ、生き延びることができただろう。

むしろ、龍の力なんて無い方が良かったのかもしれない。

「だが、私みたいに恵まれた者ばかりじゃねぇ。
今この瞬間も、飢え死んでいる人が沢山いる。
それが……現実だ。

あんたがこの国をどうしたいのかなんざ知らねぇが、大層な理想だけ掲げて現実がよくならねぇんなら、私はいつかこの城を捨てて出ていくからな」

何もできない王に仕える気はない。
それならば、見極めてやろうじゃないか。
この、王というには優しすぎるような軟弱な男が本当に国を導いていけるのかを。

………全く、私は何様だ。

リシスは自嘲気味に笑うと、目を逸らした。

「ふっ、」

「！」

「あはははっ！」

すると、何が面白かったのか……
緋龍王が突然大きな声を上げて笑い出す。

それにはリシスだけでなく、四龍たちも目を見開いた。

「緋龍王……？」

「ついにおかしくなったか？」

「……何だこいつ」

リシスは冷めた目で緋龍王を見つめる。
優しすぎて軟弱で頭がおかしい、国を治める王に対する第一印象としては最悪の3コンボだった。