守護の力を、破壊の力を〜外伝〜【暁のヨナ】 (ページ11)

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第9話【3章:矛盾の龍】ページ11

「ここが、緋龍城……」

目の前に見える赤い城。
あまりに大きなその城に目を見開き、息を呑む。

この国の要である城だから、大層立派な城だろうと予想はしていたが……ここまでとは。
これほど大きな建築物は見たことがない。

そして、何やら懐かしい感じがするのは気のせいだろうか。
リシスは目の前に佇む緋龍城を見上げ、拳を握りしめた。

「こっちだ、ついてこい」

「はいよ、相変わらずの上から目線で」

悪態をつきながらもリシスは他の龍達に続く。
城に足を踏み入れれば、城の者達は一様に龍達へと頭を下げ丁寧な挨拶をする。

……当然か、神のような力を持つ龍はこの国にとってなくてはならない存在で、敬うべき存在なのだから。
そして、そんな龍達と共にいるリシスに怪奇の目が向けられるのもまた当然のこと。

しかし、当然の事ながらその視線は気分の良いものではなく……リシスはふいと視線を逸らし、ただ行く先を見据えた。

「ここだ」

ギィ、と重い音を立てながら扉が開く。

そして、扉の先に佇む緋い髪の男が見えた。
燃えるような、緋い髪。
目があった瞬間…リシスはハッと目を見開いた。

ぐっと、拳を握りしめる。
ふつふつと…血が沸騰するような感覚を覚える。

何だこれは。

目の前の男を見た瞬間……
しかし、すぐにこの感覚の正体を理解し…口の端から笑い声をこぼした。ハッと、冷めたように、自嘲気味に笑う。

「戻ったぜ」

「王よ、ただ今戻りました」

「おかえり、グエン、アビ、シュテン、ゼノ」

ふわり、柔らかい表情で笑う。
どこか落ち着き払った…物腰の柔らかそうな目の前の男、悪くいえば軟弱。王と呼ぶにはあまりにも軟弱そうに見えた。

これが…緋龍王。
信じたくはないが、自分の中に流れる龍の血がそうだと告げている。

「それで…その人が？」

「うん、王様の探していた守護龍の力を持つ人だよ」

視線がリシスの方へと向けられ、目が合う。
じっと、見定めるように緋龍王を見るも、目の前の王はそんなことは気にせず柔らかく笑うものだから……

調子が狂って仕方がない。
リシスはすぐに目を逸らした。

「初めまして」

「……何だろうな、初めて会ったはずなのにずっとお前のことを待っていたような…妙な気分だ。
私の感情が龍の血に支配されてるみてぇで気持ち悪ィ」

ぶっきらぼうに吐き捨てる。
その姿に、少しばかり緋龍王も目を見開いた。

「私はリシスだ。
ま、一応…よろしく頼むぞ、王様よ」