傷弾の鳥【出水公平】 (ページ10)

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9話ページ10

出水side

初めての訓練を終えて、俺は自販機の椅子に腰掛けていた。

仮想戦闘モードでのトリオン兵との戦闘はトリオンにモノを言わせたような火力のゴリ押しで5秒で終わる結果となった。

俺はトリオン量が平均よりもずば抜けて高く、ついこの間入隊したニノミヤさんという人と並ぶんじゃないかと言われたが、俺にはニノミヤさんが分からないので深く考えるのをやめた。

すると奥から手を振りながら、Aがやってきた。

『お疲れ様、出水。初めての訓練どうだった？』

「まあ、上々かなー。Aこそどうだった？」

『私もまあまあかな、狙撃手は少なくとも3週連続で上位15%に入らないと正隊員になれないみたいだし、地味に練習しないとって感じ。』

「なるほどな、とりあえず帰るか。」

『依田、りょーかい』

しばらく廊下を歩いていると見覚えのある人を見かけた。第一次大規模侵攻のときに助けてもらった青服の男性だった。

Aも気づいたようで、ちょっと話しかけてくると駆けて行った。

俺もついていって、お礼を言った。

その人は迅さんという人で、ボーダーが公になる前から近界民と戦っているらしいかった。俺達がボーダーに入るのは助けた時から、副作用で視えていたと迅さんは告げた。

「そんじゃ、実力派エリートは忙しいから退散します！2人とも訓練頑張れよ。」

『はい！ありがとうございました！』

「ありがとーございました。」

Aは少しだけ興奮したように、お礼が言えてよかったー！と言った。俺も助けてもらった身だから直接お礼を言えたのは嬉しかった。

が、なぜか心の中は少しモヤモヤとした感情で埋まっていた。