23話 ページ25
出水side
Aが子供の体を吹き飛ばし、赤い赤い血が空中に舞った。トリオン兵に対して無力すぎた体が地面に転がる。
「っ、A！！」
『ぃ....ずみ....』
Aの体から出た血が水溜りを作っているのが見えたが、先に敵を倒さなければ2人とも助けられない。
俺は咄嗟にトリガーを起動し、アステロイドで敵を粉砕した。もっと原型が無くなるまで撃ちたいという衝動を抑え、Aの元に駆けつける。
刃は横腹を掠ったようで刺さったわけではなかったが、それでも出血量はとても多い。このまま放置すれば失血死してしまうだろう。
震える手で無線機に手を当て連絡を取る。
「本部！こちら太刀川隊の出水です。警戒区域外に出た敵の攻撃を依田隊員が庇った際に腹部を負傷して出血が酷い状態です。救護を要請します！」
「なんだと...、警戒区域外に漏れたのはこちらの采配ミスだ、すまない...。状況は把握した。今から救護班を送るので応急処置をして待っていてくれ。」
「了解しました....。一般人の子供も保護したのでそちらもお願いします。」
連絡をし終え、Aの制服を捲り傷口を見る。
無残にも裂かれた傷口からドクドクと血が出ている。
鞄からハンカチを取り出し、傷口に当て少し力を込める。Aは少し呻き声を上げ、苦渋の顔に冷や汗を浮かべた。
俺は傷口を押さえる手と反対側の手でAの手を握る。
はやく。はやく。
気持ちだけが先を行ってしまい、救護班の到着が何時間にも思えてしまう。
“ Aを失いたくない ”
その一心で手を握る。すると力んだ手の上から小さな手が置かれた。その主はAが命懸けで守った女の子だった。
「わたし、また....。わたしのせいで、おねえちゃんがしんじゃう。」
俺は笑顔を作る。少しぎこちない表情になっているだろうけれど、安心させるために俺が弱気になったらダメだ。
「大丈夫。おねえちゃんは死なないよ。信じて待とう。」
「...うん！」
2人でAの手を握り、必死に祈る。こういう時だけ神様に頼るのは卑怯かもしれないが、Aが助かるならなんだって良かった。
俺にとって本当に大事でーーー。
隣で笑うお前を守りたい。
誰かを救おうと思うお前を支えたい。
だから
.
.
.
.
死なないでーーー。
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作者名：いーす | 作成日時：2019年4月30日 17時
