傷弾の鳥【出水公平】 (ページ13)

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12話ページ13

Aside

私達は無言で歩いた。

出水の家は私の家と反対方向にあったけれど、心配だから送ってくという彼の優しさに今日は甘えることにした。

『今日はありがとう、送ってくれて。』

「んな、大したじゃねーだろ。また明日」

出水は私に対して背中を向け歩き出そうとした。
しかし、それは私の手によって阻まれた。

「どうした？」

『えっと...その...』

出水の制服の裾を握った手に力が篭る。

『私、今よりずっと強くなるから。一緒にA級になれるように努力するから....。だから、出水は前に進んで待っててね。』

出水は少し驚いたが、その後くしゃっと笑った

「おう。止まらずに待っとくよ。」

『うん。それじゃまた！』

私は少し照れくさくなって、出水に顔が見られないように急いで家のドアを開けた。

・・・

「あら、Aちゃん。おかえり！今日は少し遅かったわね。」

『ただいま、冬子さん。今日はボーダーの訓練が長引いてしまって...。』

「あらっ、それは大変だったわね！お風呂いれてあるから先に入っちゃいなさい。」

この人は冬子さん。両親を亡くして行き場を失くした私を受け入れたとても優しい人。

顔が赤い理由が寒かったからと思って、お風呂を薦めてくれたが本当はそういうわけじゃないということは黙っておく。

洗面所の前に立ち、さっきの出来事を思い出す。

私の嘘を一瞬で見抜いて、頼れと言ってくれた出水。実際、私は出水には頼りっぱなしだ。

そしてきっとこれからも頼ることになるだろう。

自分から人に頼ることに少しだけ抵抗はあるけれど、出水はそんなのお構い無しで私の心のテリトリーに入ってくる。

その感覚がくすぐったく、嬉しくもあった。きっと出水だからこそだろうと思うと、自分の中で疑問が浮かぶ。

あれっ...これって...もしかしてもしかしなくても...

“恋”

私が出水に対して？というかいつから？

自覚すると急に熱が集まっていく感覚がした

『そんなのって...、いやありえるけども！ありえるけど！うぅう....』

1人でジタバタしていると、遠くからどうしたのー！と冬子さんの声がしてふと我に返った。

なんでもないです！と返事をして、そそくさとお風呂に足を進ませた。

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ほんとは養子設定はボーダー関係者が良かったんですけど、出水の入隊時期が早いせいで断念しました。
期待してた皆さんごめんなさい。