傷弾の鳥【出水公平】 (ページ23)

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21話ページ23

Aside

「はあー、暇だ。」

『暇なら書類書いてくださいよ、太刀川さん。』

太刀川隊が結成されてからはあっという間。
先日、B級ランク戦で1位を初参戦ながら掻っ攫い、A級に昇格したということで話題になっている隊の隊長は机に突っ伏していた。

「遊び相手が居なくて寂しい俺に、お前は書類を叩きつけるのか。この非情な部下め。」

『そんなこと言ってたら書類は溜まる一方ですよ。私も手伝うので手動かしてください。』

18歳を諭す15歳というよく分からない構図も日常の一部となり、疑問を浮かべる人はいなくなった。
それはそれで困るのだが。

「くっそー、迅のやつ風刃手に入れやがって。」

『仕方ないですよ。』

この隊長が駄々をこねる様になったのは迅さんが風刃争奪戦を圧勝し、S級に上がってしまったことでランク戦ができなくなってしまったことが原因らしい。

他に太刀川さんとタメを張れる風間さんは最近開発されたカメレオンを主力とした隠密部隊の訓練で相手にされず、小南さんは玉狛支部にいるのでそもそも出会えない。

おまけにA級1位だった東隊は解散し、隊員それぞれが自分の隊を結成したらしい。

楽しみが消えに消えた太刀川さんは、書類やレポートを終わらすくらいしかやることがなく途方に暮れていた。

『今日の防衛任務までにこの書類だけは終わらしちゃってくださいね、期限明日なので。』

「へいへい。分かりました。」

付きっ切りで書類を終わらした後、柚宇さんや出水も集まり、気づけば防衛任務の時間になっていた。

1ヶ月程前からゲートの出現数が増え、今日だけでもかなりの数のゲートが開いた。とはいえ、敵のほとんどはバムスターかモールモッドだったので難なく任務はこなせた。

任務が終わった後は作戦室で荷物を取った後、出水とボーダーを出て警戒区域内を歩いた。

「最近、なんかゲートの数増えてるよなー。」

『そうだね。最近は特に多い気がする。この前なんてイルガーが出たからビックリしたよ。』

「太刀川さんの弧月で一刀両断だったけどな。」

『あの人戦闘に関してだけは天才だからなあ。』

やはり出水もゲートの増加は気になっていたらしい。増えてもやることは変わらないからいいのだけど、街の方にトリオン兵が出てしまうではないかという不安要素であった。

歩きながら頭を悩ませていると、前から小さな声が聞こえた。

「おねえちゃん？」

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