及川徹は本音を言えない。【HQ】 (ページ21)

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幼き頃の感情は愚かだ。

ありもしない話をでっち上げて。
ありもしない噂を流して。

そして、幼き頃の心は、素直で醜い。

「とーるくん、Aね、とーるくんがずっとずっとずっと嫌いだったよ。」

人に嫌われたくない彼を、
必死な彼を

私は、その一言で大きな傷をつけた。

「…ｯ、え……!!」

あの時の、君の顔は忘れない。

否、忘れられない。

「ごめんね、……ｯ!!」

✱✱✱

「せんぱーいっ!!」

「うわっ!!…あ…こないだの！」

…目の前で繰り広げられる光景。
俺は、及川さんと2人きりで話をしたいのだが。

「…おい那流!!お前いつから…」

「秀がどっか行こうとするから着いて行っただけ～♪ラッキーだー!!」

…あぁもう。
またイライラが溜まる。

ストレスが溜まって、溜まりに溜まって。

「……お前帰れよな」

「…矢巾ちゃん!!そんな酷いこと言わないでっ!!」

…そうやってまた貴方は笑うんだ。

それで那流はその笑顔にまた惚れるんだ。

何なんだよ、この茶番は。
つまらない茶番を見せられてる気分。

本当、笑いすら出てこない。

「俺、及川さんと話がしたいんだけど」

「…ｯ…!!わかったよ。もう帰るねばいばいー。」

那流は不機嫌そうに帰っていく。
…また勝手な奴だな、なんて思いながらも、愛おしい。

「それで、話とは？」

「…もう彼奴に寄らないでください。」

俺は、及川さんを睨みつけた。