zm…その甘さ病みつき(後編) ページ38
私の目の前で、ゾムは尖った犬歯を見せて悪魔のように笑った。
「なん、俺が他の男に取られへんように噛んでると思ってたん?」
「…違うの?」
「くははははっ、ほんっま可愛えなぁ、Aは」
首を反らしてゾムは笑う。
一頻り笑った後、目と口を三日月のように細めてにっこりと私の顔を見ると、両手で頬を包む。
「"あたしのせいでゾムがこんっなに悲しんでるなんて、もう絶対行かないようにしなきゃ"って思ったやろ?そうやろ?なぁなぁ」
「…もう知らない」
「くははっ、図星やん〜!ほんま可愛えやっちゃな〜、そういうとこも好きやで」
「私はゾムのそういうとこ嫌い〜!!」
勘違いしていた事が恥ずかしくて、ゾムが思った通りに動いている自分が悔しくて、抱きしめてくるゾムを両手で押し返すけど全く歯が立たない。
普段柔和な印象が強くて、何を考えてるか本当に分からない。
「俺のって他の男に教えるんやなくて、Aは俺のやってAにちゃーんと分かってもらうためやで?」
「わかっ、てるもん」
私の左耳に唇をくっつけて甘ったるい粘ついた低い声で、脳内に刻み込むように言われた言葉に背筋がゾクリとする。
思わず声が出そうになったのを抑えて、ゾムの肩に顔を埋める。
「お利口さんやから分かったんやもんな?Aは俺のやで?鏡見て俺思い出すやろ?やった事思い出すやろ?どんな風に俺がAを可愛がったかたくさん思い出せるやろ?」
顔を上げさせられ鋭い瞳に見つめられて、降り注ぐ言葉に私は高揚する。
「せやろ?」
「…ゾムの意地悪」
「くははっ、大好きやって言うて示してるだけやん。Aも悔しかったらやり返し?」
言葉尻が消えるように深く口付けし、私の下唇を噛んで微笑むゾムに、今度は私から噛みつくように深く深く口付ける。
ソファに凭れるゾムに乗りかかり貪るようにキスをして、ゾムは私の頭を掴んで離さない。
お互いがお互いを噛むように、食んで含んで溶け合い混じり合うものを飲み込んで。
病的なほど、甘く深く濃いキスを何度も繰り返す。
それだけでは足りないけど、それだけで伝わる気持ち。
「Aは俺から離れられへんな」
「ゾムだってそうでしょ?」
「当たり前やん、食べたくなるほど可愛いAを離すわけないやん」
「…なんかゾムが言うと怖い」
「食べたらキスできひんやん、それは嫌や」
ごろんっと私の膝に寝転んで笑うゾム。
ぐう…、と音がした。
「腹減った…」
「おやつにしよっか」
「んっ!!」
em…痺れるほどの甘さ(前編)→←zm…その甘さ病みつき(前編)
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作者名：芝谷
| 作成日時：2019年11月6日 19時
