rb…甘く優しく(前編) ページ35
ロボロは優しい、とても。
今までどうして彼女ができなかったか不思議に思う。
「……届かない」
今日はロボロとショッピングデートで、今は本屋でお互い欲しいものを物色中。
私は気になっていた小説を見つけたが、大型の本屋さんはこれがいけない。
身長を優に超える高さのある本棚が並んでいるので、運悪く上の方にあると手が届かないのだ。
「店員さん…」
通路を見渡しても店員さんは見えず、しかし欲しかった本は残り一冊。
どうしよう、呼びに行っている間に誰かに取られてしまうかも。
「A、どないしたん?欲しいもんあった?」
「ロボロ!あったんだけど、届かなくて…」
「ん?」
二人で見上げる、目が合う、ロボロが手を伸ばす、目が合う、にっこり。
「…すまん」
「いいの大丈夫!ロボロはここにいて?私店員さん探して」
「あの、取りましょうか?」
私達のやりとりを見ていたのか、高身長の男性が微笑みながらこれですか?と手を伸ばしてくれた。
彼は良かれと思ってだろうし、断る隙もなかった。
はい、と手渡された本を受け取ったけれどまるでそれは辞書のように重く感じて。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、困りますよね。あんま高いとこにあると。じゃ、失礼します」
「…あの、ロボロ」
「買ってき?良かったやん、取ってもろて」
優しく微笑むロボロの顔を見た時、チクリと心が痛んだ。
お店を一通り見て回って帰ろうとした時、靴屋さんの前を通った。
可愛い靴があったけれど、好みな色がない。
それに、あのヒールの高さだと足が疲れそうだと思いやめた。
「ええんか?中入って見てもええんやで?」
「ううん、欲しい感じのなさそうだったし!」
「…なあ、A。俺のこと気にせんで、ヒールある靴とか履いてええんやで?」
「…え?」
どうしたの、急に。
どうしてそんな悲しそうな顔をするの?
ロボロの視線は私の足元を見ていて、自分もピンク色のスニーカーを見下ろす。
吐き心地が良くて気に入ってるし、歩きやすいし疲れにくい。
ロボロとショッピングデートする時はほぼこれを履いている。
「履きたいやろ?でも気にしてくれてんねやろ?」
だけどそれは、足の痛さを気にせずにロボロと歩きたいから。
手を繋いで、二人で色んな話をしながら歩くのが好きだからなの。
「ごめんな、ちっちゃい彼氏で」
「…ロボロの馬鹿、大馬鹿!何もわかってない!」
「え、何でキレてんの?」
「キレてない!怒ってんの!!」
「同じやん」
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作者名：芝谷
| 作成日時：2019年11月6日 19時
