request…甘×em ページ13
『勇気出してさ、攻めちゃえば?』
頭の中で繰り返す友人の声。
意識するとできないよ、無理だよ、恥ずかしいよ。
「Aさん、生地はこんなもんでええかな?」
「あっはいっ、大丈夫です!!」
「はは、どうしたん?」
言えない、エミさんとキス…したいとか考えてたって言えない。
お休みの日。エミさんの家でスコーンを焼いて、それをおやつに2人で紅茶を飲もうという事になった。
生地を捏ねるエミさんの手の筋とか、指使いばかり見てしまう。
横顔を見て、あれを想像して恥ずかしくなる。
「あ、ほら…粉付いた手で顔触るから」
「え?」
「頬っぺたについてますよ」
エミさんが顔を近づけてきて、私の頰に手の甲で触れる。
優しい、細めの瞳に吸い込まれそうになった。
瞬間、エミさんが目を見開いて体を離す。
「あぁ、あかん!!俺の手も汚れててっ、ごめんな?!あ、でもちゃんと取れたから!!」
「だ、大丈夫…です」
不慣れな私達の関係はこんな感じで進まなくて、だけどそれが私達らしくて幸せだったり。
「と、とりあえずこれで焼こうかな!!いや〜、オーブンとか俺一人やと使わへんからAさんに使ってもろて良かったわ」
でも、触れてほしい。私も触れたい。
エミさん、エミさん…。
「…あ、あ、Aさん?」
目を瞑って、オーブンの様子を見ていたエミさんの背中に抱きつく。
どうしよう、ここからどうしたらいいの?
「あの…Aさん」
やだ、離したくない。
そう思って一層強く抱きしめた時、私の手にエミさんの手が重なった。
少し緩められて、エミさんは私の腕の中でこちらを向く。
「…エミさん」
「その、知ってますよね?俺、経験ないって」
「…はい」
エミさんの顔は赤くて、触れ合う体から鼓動が速いのが伝わる。
「こういうの、リードせなって…あぁ、ごめんな。俺の方がしっかりせなあかんのに」
「大丈夫です、年上とか年下とか今は…」
そう言いかけた時、一瞬で抱きかかえられてカウンターに乗せられてしまった。
背の高いエミさんと目線が合い、お互いの熱が上がって行くのがわかる。
「ちゃう、彼氏の俺がって意味」
その鋭い視線に心臓が跳ね上がる。
でも次の瞬間にはふにゃっと困り顔で、私の肩に顔を埋めてきた。
「あかん…ほんま、はー…心臓痛い」
「ふふっ、そんなエミさんが好きです」
言い終えず、私の言葉はエミさんの唇で塞がれた。
初めてのキスは甘くて、その熱で溶けそうで、たくさんの愛を感じた。
「…俺も」
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作者名:芝谷 | 作成日時:2019年11月6日 19時