優しさに溺れよう【竈門炭治郎】

弐 鬼退治 ページ3

Aside


抱き上げられて、上ってきた山を下る。
このままじゃ、余計親に怒られてしまうではないか…。


「しまった、まずい…」


彼が急に立ち止まった。
私は訳が分からず辺りを見回した。
彼の目線の先には化け物がいた。

初めて見た化け物に私は声が出なくなり一気に震えが止まらなくなった。
見たことのないような怖い目つき、殺気…。
このままじゃ喰われる。
怖さのあまり涙が出そうになる。


「夜に出歩いてはいけない理由はこれだ…」


彼は苦し紛れに言った。
心拍数が上がる、このまま殺されてしまうのか…？
すると彼は化け物から遠ざかり、背負っていた箱を置いて私に言った。


「怖がる気持ちは分かる、けど大丈夫だ、俺を信じて欲しい」


彼の大きい手が私の手を包んだ。
温かく安心させてくれるような手だ。
まっすぐと私を見て、ぎゅっと手を強く固く握った。

彼は化け物の方へまた戻って行った。
私は訳が分からず終始不安だった。

でも私は彼のことを信じるしかなくて、ぎゅっと目を瞑っていた。
早くこの夜が終わってほしい…。

そう思いながら彼の熱が伝わった手を必死に合わせることしかできなかった。

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