優しさに溺れよう【竈門炭治郎】

拾陸 俺の俺の ページ17

炭治郎side


ああ、手こずってしまった。
まだまだ俺には鍛錬が足りなかった……。
鬼が来て、倒したはいいものの少しかすり傷を負った。

すぐに倒してAのところに帰ると決めたのに。
一人にさせるのはまだ少し不安だ。
いくらあれから数日経ったとはいえ、Aは稀血…。

家が見えてきた。
あとちょっと…、足を思い切り前に進める。

………家の前に誰かいる。
座っているようだが……、辺りをキョロキョロしている。
こんな時間に人間が外にいるなんて。
まさか…、鬼？

頭の中でぐるぐるといろんな想像が駆け巡る。
駄目だ駄目だ、そんなの。

ゆっくりと近づいてみる。


「おい、お前は誰だ、何故、家の前に立っている！！」

「うわあああああ、誰？」

「聞きたいのはこっちの方だ！」


どことなく聞いたことのある声だが、暗くて分からない。
あ、でもこれは鬼じゃない。
鬼の匂いが全くしないではないか。

段々と近づいていくことで分かる。
……これは善逸の匂い！


「善逸ーっ！！」

「うわぁあああああ、落ち着いて、落ち着いてってばぁ！」


善逸はあたふたと焦る。
善逸は静かにしろとポーズをとるが、全く訳が分からない。


「お前、何してるんだ？まさか、俺のAを…」

「なんのこと…？俺はただ見張りを…」


善逸の言っていることが分からずに俺は冷静さを欠いてしまい勢いのまま、家に入る。

今すぐAに会いたい。
俺にはその一心で頭がいっぱいだった。

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