優しさに溺れよう【竈門炭治郎】

拾 火照る頬 ページ11

炭治郎side


Aはどうやら禰豆子を理解してくれたようだ。


「禰豆子ちゃん、美人さん…」


…だが、Aがさっきからこのようなことをずっと言っている。
美人だの可愛いだの…Aも十分な美人さんなのになんでそんなこと言うんだ？


「Aも十分美しいぞ？」


俺は座って禰豆子をなでているAと無理やり目を合わせた。


「…っ！？」


ほらその反応、お前も十分可愛いくて美しいというのに…。
なぜ自覚してないんだ、不思議でしかたない。

愛おしいな…。

Aは心が綺麗だ。
Aからするいい匂いから分かる。

心が綺麗な人は見た目も綺麗…俺はうっとりと眺めてしまっていた。

羽織も似合っている。
俺が急いで用意したものだけど、ちょうどよく着こなせている。


「炭治郎…やめてよ、そんな冗談」

「何言ってるんだ、冗談なわけがないだろ。こんなにも…」

「炭治郎…？」


…うっかりと口から出そうになる『こんなにも手なずけたい』

もっと俺と俺とが溢れてくる。
欲が出てきて満たしていきたい。
Aとのこれから。

Aが俺の家族だったら、もっと親しい関係だったら、
妄想するのは自由なことだった。

Aは俺のことをどう思っているのだろうか。
嫌いではないと言ってくれて、恩人だとも言ってくれた。

けど、俺はそんなもので心が満たされはしなかった。

俺はもともとAが幸せになってくれればなんだっていいと思っていたのにな。
だからAに優しさを沢山与えようとし続けて、これからもするつもりで…。

なのに、

もっと俺を見てほしい。
もっと俺に関わってほしい。
もっと俺に…。

………あれ？

…なんか急に体温が上がったような。
頭に血が上るような感覚。

…まさか、俺まで顔真っ赤？
焦って自分の顔に触れる。
熱を帯びていた。

これは一体なんなんだ？

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