【ハンドレッドノート】ホークアイズの名探偵は愛情深いようで。【司波仁】

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-side 司波仁-

「っおい仁、Aは！？無事か！？」
「瑠衣、落ち着け…！」
大きな音を立てて病室の扉が開き、聞き慣れた声が2つ聞こえた。
「…今は、眠ってる。そのうち目を覚ますだろう、って。」
「…はぁ〜〜…っ、よかっ、た…。」
壁伝いにゆっくりと瑠衣が座り込む。
隣に立っていたおっさんも、安心したように息をついた。
「…仁、平気か？」
「あ、そうだよお前も怪我とかしてねえよな？」
「俺は、なにもない…。」
そう、俺は無事だ。
Aが刺されたその場にいたのに、何もできずに、何もされずに。
…未然に防げなかった。
人混みに紛れた犯行とはいえ、俺の目なら刃物に気づけたかもしれない。
なのに、何もできなかったのは。完全に油断していたから。
こんな場所で事件が起こるなんて考えもしなかった。考えようとしなかった。
…大切な人1人守れずに、何が探偵だ。
息が苦しくなって、頭が重くなる。

「…仁、平気じゃないな。」
「俺は平気だ、それよりAが…、」
「先程より顔色が悪い、呼吸も浅くなっているが。」
「平気だっつってる…！」
肩に乗せられた手を払ってしまう。
こんなのただの八つ当たりだ、何してんだ俺は。
「…仁。」
おっさんが屈んで、椅子に座っている俺に目線を合わせる。
改めて両肩にそっと手を乗せられ、真正面から向き合った。
「仁、自分を責めるな。私達は神じゃない、人間なんだ。何もかもを守り切れる訳じゃない。分かるか？」
「…わか、る…。」
「お前の事だからきっと、こうなる前に防げなかった自分を責めてるんだろう？その気持ちは分かるが、この事件は仁は悪くないだろう。」
「…悪いのは、犯人だ。」
「ああ、そうだ。Aさんが今生きているのは、お前が救急車をすぐに呼んだおかげだしな。お前が悪い訳がない。」
「…！」
俺のおかげで、Aが今生きてる、のか？
Aを守り切れなくても、助けられたってことか。
何もできなかった訳じゃない。
「今のお前に、私達にできる事は、犯人を突き止め事件を解決すること。Aさんを守れなかったことを罪と思うなら、その罪を償いたいなら、それしかないんじゃないか？」
「…ああ、そうだな。」
目が覚めたような気分だ。
過去を悔やむ暇があったら、俺は俺にできることをしなければ。
そう決めたそのとき、ずっと握っていた手がふと、ぴくりと動いた。
『…ん…、』
「…A、？」

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