季節 ページ44
＊
そんなこんな、ちょっとだけ悶着があったり、なかったりして、
「……ほんとに売っちゃうの？」
ずっとずっと、知ってた事。
お話の中みたいに、時間は止まってはくれなくて。
泣いても、縋っても、わたし達の手をすり抜けていくから。
あっという間にじんくんは見慣れた制服を脱いで。
わたしは高3の3学期を迎えた。
幼い頃からずっと。
お隣に建っていたおうち。
元はオンマの両親、つまるところじんくんとテヒョンのおばあちゃんとおじいちゃんと五人で暮らしていたから、
オンマすらいなくなった今、この家は少し2人には大きすぎる。
おじいちゃんとおばあちゃんがいなくなった後も、オンマが「手放したくない」と言っていたという家だ。
けど、じんくんは「大切なものが変わった」と言った。
「テヒョンは嫌がらなかった？」
わたしが「寂しい」なんて言う資格はない。分かっているけど、会えなくなるわけでもなんでもないのに、どうしようも出来ない気持ちのやり場が
そんな風に口に出させた。
「んー、うん。あんま」
「…………へぇ、」
正直意外だった。
オンマとの思い出の象徴のようなこの家を手放すことをごねずに受け入れるとは思ってなかった。
テヒョンも大人になったって事なのかな。
思わずちらりと後ろのわたしの家に視線をやった。
テヒョンとじんくんのいないこの家は少し。……ううん、正直かなり。
心細い。
「まぁ、アイツが春休み中の間に越すから」
あまりにあっさりと、淡々とじんくんが話を進めていくから。
喉のとこに何かがつっかえて。
ちょっと、苦しいよ、じんくん。
……わたしは未だに将来を決めかねている。
進学するつもりは無論ない。
ぼんやりと、旅館か何か。住み込みで働ける場所を、という所で思考は止まった。
引っ越すと言っても、たんにお金の問題だから、すぐ近くの安い築数十年のアパートに移動するだけ。
テヒョンも受け入れたのに。
わたしが身勝手なんて言えるわけもない。
「今すぐってわけじゃないし、そんなに急がなくてもいいけどちゃんと荷物まとめといてね」
こぼされた言葉にちょっと驚いて、わたしは20センチくらい高いところにあるじんくんの顔を見上げる。
「テヒョンの手伝いって事？」
「出来たら手伝ってやってほしいけどAのもね」
「……え？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1441人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろい@ゾンビ(プロフ) - かなさん» パスワード申し訳ありません(T ^ T)出来る限り早く公開出来るように努めます…！温かいお言葉ありがとうございます、コメント本当にありがとうございました…！ (2019年9月21日 0時) (
レス) id: c91a121712 (このIDを非表示/違反報告)
しろい@ゾンビ(プロフ) - さっちゃんさん» はい、元気です〜！体めっちゃ丈夫です！さっちゃんさんもお変わりありませんか？そんな風に言って頂けてこちらの方が幸せです、もう沢山嬉しすぎるお言葉ありがとうございます、愛してます〜(；；) (2019年9月21日 0時) (レス) id: c91a121712 (このIDを非表示/違反報告)
しろい@ゾンビ(プロフ) - さっちゃんさん» さっちゃんさーーーん！！！(；；)(；；)(；；)久しぶりです！嬉しいです！！さっちゃんさんだ！！コメント何度も読み返してしまいました感想うれしい…… わわ、申し訳ありません、あとがきに記載した通りの事情でして…(；；)出来る限り頑張ります！ (2019年9月21日 0時) (レス) id: c91a121712 (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 続きが凄く気になります！！続きがパスワードがー(Ｔ＿Ｔ)また続き見られるの楽しみみに待ってます(*´-`) (2019年9月20日 16時) (レス) id: 6f9a56978c (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - ヤバイです(T ^ T)続きを読もうと思ったんですがパスワードかかってて(泣)また外れた時に読みたいと思ってます(^^)あ〜〜しろいさんお元気ですか？←いきなりwまたこうしてしろいさんのお話を読めるなんて幸せに思っております！！これからも応援してます！大好きです泣 (2019年9月20日 3時) (レス) id: 77a52bcd61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しろい
| 作成日時：2019年1月12日 15時
