キオクの鎖(*) ページ36
【理解できないわ】
その言葉の途中で自分の顔が歪んでいると自覚したAはハッと気付いて未た微笑んだ。
「わたしもりかいできない。どうして、おもいでを だいじにするのかも」
Aは言葉を続けようとしたが途端に口を手で塞いだ。
その様子を見ていた彼女は嘲笑う。
【ほら、言おうとしたけれど言わない。矢っ張り貴女は鼻から彼の人達を信頼していないのよ】
「それはむこうもおなじだよ」
【如何して判るの?】
「それくらい かんがえればわかるよ」
【あっそ。なら貴女と話していても時間の無駄だわ。そろそろパパの元へ戻らなきゃ】
そう言ってフワリと無重力の様に浮く身体は何処かへ飛んで行く様に空間を泳いだ。
【さよなら。貴女みたいな人、勝手に死んじゃえば良いわ】
死を促す言葉に不思議と怒りは湧いてこなかった。
寧ろその言葉を受け取った彼女は人生でこれまで以上に輝いた笑顔を浮かべた。
「そうしたいな」
息をすると共に消えていく目の前の光景、そして__。
「……あさ」
朝日が目に染みるのを感じて目が覚めた。
しかし朝とは言え澄み渡る青空が見えて今の時間が本当に朝なのか疑いたくなった。
頭はもう痛くない。
火傷の様に身体に纏わりついていた熱も無かった。
「あっ。そうだった」
違和感のある部屋に昨日の出来事を思い出した。
そういえば昨日は事務員に避難命令が出て連れてこられた森の中にある旅館に泊まっていた。
聞けば此処の責任者が社長と知り合いらしく避難場所として此処で匿ってもらっている。
「……12じ」
この部屋にある時計を見てお昼だと知った時、襖の叩く音が聞こえた。
「はーい」
「具合は如何?」
襖を開いて現れたのは春野だった。
具合はと聞かれ自分の体調ももう一度確かめる。
頭の痛さは嘘の様に消え、火で炙られる様な熱さを持っていた身体は既に鎮まっていた。
「だいじょうぶです。ごめいわくを、おかけしました」
「いいえ、大丈夫よ。おでこを触るわね」
春野の手がAの額に触れる。
「うん、熱も無いわね。身体は?」
「きのうまでのダルさがウソのようにきえてます」
「食欲は?」
「おなかすきました」
「なら、お昼にしましょう。着替えて隣に来て下さいね」
そう言って春野は隣の部屋へパタパタと駆けて行った。
窓の外を眺めると木々が立ち並んでいて、心が穏やかになる場所だった。
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ほんばし(プロフ) - エレンNo2さん» コメントありがとうございます。面白いと言ってくださり、ありがとうございます。自己満足で書いている作品ではありますが、そう言ってもらえるととても嬉しいです。ありがとうございます! (2023年1月11日 17時) (レス) id: cf71fd7287 (このIDを非表示/違反報告)
エレンNo2 - 僕…文豪ストレイドッグス大好きなんですけど、すっごいおもしろかったです! (2023年1月11日 16時) (レス) @page2 id: 84c79903b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほんばし | 作成日時:2020年1月14日 21時