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心の中では元太を避難することばっか思ってるはず。
だけどそれとは反対に上がっていく口角。
熱を持ち始め赤くなる頬。体は正直とはこのことなのかな。
「⋯⋯」
その文字を見つめながら、やっぱり字綺麗だなーとか色々考えて。
無意識に伸びる腕。
きゅ、きゅと窓が擦れる音。水滴が溜まって窓の下に滴り落ちる雫。指を離せば、松田元太と書かれた隣に松倉海斗という文字が浮かんでいて。
…いつの間にか正式に、縁結びが完了していた。
「⋯⋯」
それを眺めて数秒。
なに優越感に浸ってんだと我に返った。
いい歳した男が何馬鹿なことしてるんだろう、ないない本当にこれはない。
いくらなんでもこれは恥ずかしすぎる。
…よし、なかったことにしよう。
消そうと再び窓に手を伸ばしたその瞬間、体が何かに引っ張られて後ろに傾いた。
ぽすんと音を立てて背中にあたった柔らかい感触に温かい体温。
ふわりと鼻をかすめる落ち着く匂いは他の誰でもないあいつの…元太の匂いで。
「…へぇ、なるほどね。」
耳元で囁かれるように呟かれた元太の低音に一気に体の熱が上がる。
…もしかして、見られた…?
証拠隠滅だ、とあれを消そうと手を伸ばすが元太の腕が俺の腹に回り込んでて上手く動けない。多分焦りすぎて今俺の顔大変なことになってる。
「いや、ちがう。ちがうから、これは…」
「え?なにがちがうの?」
「……とにかく、ちがうから…は、離して…」
「違うわけないでしょ。あの中に俺以外に入るのはもちろん海斗しかいないから、海斗が書いた通りであってるよ?」
「う、うるさい!いいから、離せ!!」
恥ずかしいことを掘り返してくる元太。
俺が必死に逃れようとしても全く離れてくれない元太の腕を掴みながらほぼ叫ぶように訴える。
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紫亜(プロフ) - kn_さん» コメントありがとうございます。ただいま私生活の方が落ち着いてきているのでゆっくりになりますがお話を作成中です。もうしばらくお待ちくださいませ。(*・ω・)*_ _)ペコリ (2021年10月22日 21時) (レス) id: c21d0ca7dc (このIDを非表示/違反報告)
kn_(プロフ) - 更新待ってます☺️ (2021年10月22日 18時) (レス) id: 26288553d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫亜 | 作成日時:2021年8月26日 15時