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手から伝わる体温に心まで溶けていくようにぼろぼろと頬を涙の粒が伝っていく。
「………ぅ…っ、ふ………」
「………海斗。」
元太はそのまま俺の体を寄せるとぎゅっと向き合うように体の向きを変えて抱きしめてくれた。
尻尾がゆらゆらと揺れてお互いの体に当たった。
「ねぇ、俺に教えて。何があったの、ちゃかの家だよね?」
少しだけ体を離して労るように涙を左手で拭ってくれる。
でも、その左手に原因となった光景を重ねてしまったせいで思い出してしまい、また体が震えた。
…この手が、俺だけのものになればいいのに。
俺は捨てられてた元野良猫だけど、海人はどこかのブリーダーの出だっていってた。
元々はどこかの純血のちゃんとしてる子で、劣悪な環境下だったからちゃかが保護するまでは酷い有様だったみたいだけど。
きちんとしたケアと愛情を注がれた今ではその名にふさわしいような立派な柔らかい毛並みと綺麗な瞳。
そして守ってあげたくなるような、養ってあげたくなるような、そんな雰囲気さえ感じるようになった。
そりゃあ元太が触りたくなるのも当然だとは思う。
………何もおかしいことなんてないのに。
………そうなのに………
「……俺以外の子を、あんまり触ったりしないでよ…!!」
そうやって叫ぶように言い切る。
「俺は…野良だったし、捨てられてたし…全然上等じゃ無いけど…だけど、だけどさ……!」
元太は、俺の飼い主でしょ…?
ぎゅ、と元太の服の裾をシワになるほど強く掴んでそう訴える。
元太は目を丸くしてびっくりしていたけれど、これで引かれてしまっても後悔はない……と思う。
……なんて強がってみても本当に引かれて嫌われてしまったらきっと、生きていけないのだろうけど。
こいつに捨てられたら俺はもう死ぬしかないんじゃないかとさえ思ってしまうくらいに俺は元太に溺れてしまっている。
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紫亜(プロフ) - kn_さん» コメントありがとうございます。ただいま私生活の方が落ち着いてきているのでゆっくりになりますがお話を作成中です。もうしばらくお待ちくださいませ。(*・ω・)*_ _)ペコリ (2021年10月22日 21時) (レス) id: c21d0ca7dc (このIDを非表示/違反報告)
kn_(プロフ) - 更新待ってます☺️ (2021年10月22日 18時) (レス) id: 26288553d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫亜 | 作成日時:2021年8月26日 15時