黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ47)

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あむは何故か家でキャラを作っているらしい。外で、なら分かるけれど……家？彼女は帰宅すると、小学生から姉となるとか。小さい妹がいるんだ。初耳。

姉としてしっかりしなきゃいけない。家族で遊園地に来たときも自分が乗りたいものではなく、妹の好きな乗り物から回るんだと。

お姉さんキャラや、人からかっこいいと言われたり。そういう外キャラは嫌いじゃないけれど本音は……思いっきり好きなのばかり乗ってみたい、ね。親にとっては手がかからなくて、学校では求められる姿だったり。

「強いねえ」

「俺も思った。でもオマエが言うと説得力あるな」

「重いこと言わないでよ」

イクトさんにとって、あの日いた遊園地が大切な場所だっていうのは実は二織から聞いている。特に余計なことは言わずに話を聞く。彼は、寂しいのだろうか。

工事中の遊園地はいつか取り壊される。消える。好きな乗り物を選んで迷っている間にも時間は進み、終わってしまうんだ。

しかし、あむにとっては違う。彼女があの遊園地に来たのはあの日が初めて。だから残りがあと何日でも、あむはあの日から始まった。だから、イクトさんも。あの日(今日)をまた始まりにしよう……か。

彼が何を考えていて、どんな悩みと向き合っているのか。私は知らない。知ってもいいような関係でもないし。でも、なんか。ざわざわする。胸騒ぎみたいに。

「ねえイクトさん」

何言ってるんだと思うかもしれないけれど。自分勝手、矛盾している……そう思うだろうけど、聞いてほしい。

あんまり離れていかないで。この関係が好きだから。

「私はロックを持ってないし、エンブリオを取り合うことに関してはおじゃま虫。イクトさんの近くにいてもなんの利益にもなれない」

「……そんなのが理由でこの家に来てるんじゃねーけど」

「うん、分かってる。二織の友達だから、楽くんは恩人だから。誰がとかじゃなくて私を見ていてくれるのは知ってるよ。自分が勝手に不安がっているだけ」

同じだったらいいのに。

「イクトさんにとって、私の記憶がまた吹っ飛ぶのが不安だってくらい。私がいつか……あなたの視界からいなくなると思ったら、怖くてたまらない」

「A……？」

時間にして数秒。

彼の首元に手を回して、今度は自分から抱きしめた。

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