黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ44)

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避けていない。嘘つけ。俺なんかした？してないよ。

そんなやり取りを、覗き込まれて瞳の奥までつかまった状態でやった。手足の指先の感覚がわからない。文字通り動けない。じいっと視界いっぱいにイクトさんがいるんだ。

「逆に聞くけど。なんで、」

「え？」

「……イクトさんは。私に避けられたら嫌なの？」

もし、この先。探していたものが見つかって、それこそ戦わなければいけなくなったとして。そうしたら情なんてない方がいいに決まってる。

私は良いのだ。メリハリをつけられるから。けれどあなたは得意そうには見えない。もし私が誰かを庇って割り込んできたら、キャラなりしたイクトさんは技を出すのを躊躇すると思う。

倒れて、病院で目を覚ましたとき。私に触れながら、忘れられるのが怖いと言った人だ。……知ってるでしょ？私が人間観察に長けていること。

「嫌だった」

「！」

彼が苦しくない道を示したつもりだった、のに。気ままな黒ネコはやはり思った通りにしてくれない。

バイオリンを弾くために大事にしている手が、指先が。私の首筋から這うように耳の後ろへ。そして両方の頬を包む。物理的にもがっちり捕まってしまったらしい。

「オマエは帰ってくるのおせーし。二織(あいつ)に訊いてもはぐらかされるし。あの日、最後の顔がこびりついて離れない」

「顔……？」

「あむに心配かけたくないのもあったんだろうけど。けれど、俺にはまるで」

人形みたいに見えたんだ。分かるよ。この家に初めて来てから、もう三年以上経ってる。お前の顔色も、内心も。多少は分かるようになった。

……人に見透かされるってこんな気分なのか。大事な人なら特に。それもだけど。この人は、イクトさんは。ちゃんと私のことも見ていてくれた。

私、何を不安になっていたんだろう。何ヶ月経っても、彼はこうして気にかけてくれたというのに。

「……ずるい人」

「え」

「自分は踏み込まれるの嫌いなくせに、私の中にはズカズカ入り込んで来るんだから」

まあ……私は、そういうところ。嫌いじゃないけれど。付け足した後、ちゃんと笑えていただろうか。

彼の手を剥がす。この体制、首とか腰が疲れるの。身長差どれくらいあると思っているんだ。座って話そうよ。部屋の隅に置いてあるクッションをひとつ渡す。

「言っておくけど、私だって……」

イクトさんがあむといた理由、知りたいのに。

彼は目をぱちくりとさせる。

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