黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ43)

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193# 遠くなりたいのにページ43

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私以外は出払っていた。しゅごキャラもだ。

ロストに「貴様を連れていかないとワタシが怒られるデス！」と言って、こはくが力ずくで引きずって行った。いってらっしゃいと送り出す私を、ものすごい目でジトリと見ていたっけ。

多分、今日の私は運が悪い。だって、

「いれて」

「窓からって。猫味が増したね」

ヨル君と同じ、耳としっぽを生やしてその人はやってきた。

あの日から何とかかんとか会わないで生きてきたのに。二織なんかは一番協力的だった。でも、頼りになるその男は今は学校だ。いつも通り運動部の助っ人。

まさか、それを知ってイクトさんは家に来たの？ ……なんで？だってそれって。まるで、私に。

「こはくはいないのかにゃー？」

「臨時のしゅごキャラ会議だって」

今日は辺里の家でやるって聞いたな。

あーあ、結局中に入れちゃった。……でも窓越しに目が合ったらしょうがないじゃん。無視したら変に思われて怪しまれる。できるだけ普通に、普通に。

それで深呼吸。イクトさんは私の考えていることなんかつゆ知らず。机の上に開きっぱなしのテキスト類に目をつける。あ、二人とも長居するなら一旦片付けようかな。

パタンと表紙を上に閉じてから全てを重ねて端に置く。シャーペンや消しゴムなども並べておいた。

「それ、英語……」

「うん」

「授業は中学からだろ？」

「そうなんだけどねぇ」

イクトさんには話してもいいか。

「私ね、初等部を卒業したら外国に行くの」

行先はまだ決まってない。今の候補ではアメリカかイギリスか……。父さんがイギリスで働いているからそっちの方になるのかな？なんて。

一年後のことだ。今の時点では、来年の今頃には日本にいないことしかわからない。

「それより何しに来たの？」

「………あー。聞きたいことがあって」

「うん？」

私たちは互いの連絡先を持っていない。エンブリオを奪い合う組織にいるからね。一応ケジメのつもり。

いつもは誰かいるときに話すからなぁ。玄関じゃなく個人の部屋の窓からなんてよほど急ぐのか、それとも……。

場合によってはどうでもいいことを考えて、自分の世界に入る。それが隙をうむことに私はもっと早く気づくべき。今、このときは絶対違った。

自分に影が重なったときにはもう遅くて。気持ちを自覚したのと、久しぶりなせいかな。このバグった距離しんどいっての。

「避けてるよな、俺のこと」

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