黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ5)

今日:10 hit、昨日:25 hit、合計:14,368 hit

155# 脳裏に張り付いたページ5

◆

実の妹を追い出してまで、オレらに伝えたいこと。シキ先輩はいつもと変わらない笑顔だったが、それには似合わない結構な爆弾を落として消えた。サッカー部に顔を出してから帰るらしい。

あ、そうそう。唯世とオレに別用があったのはマジ。というかキリクにまた会えるなんて。あいつがたまごに帰ったのはAさんから以前に聞いていたからびっくりだ。

『病気なら完治が条件。でもあいつは記憶以外なら健康体だ。医師曰く、何かのきっかけで戻ることは充分有り得るんだと』

『………で、それを踏まえてぼくたちに伝えたかったことは』

『Aは、思い出すことを望んでいない。むしろ拒絶してるんだ』

『どうしてそう思うんですか？』

『オレも一応兄貴だからな。見てたら分かる』

.. .. ..

" 羨ましい。私には、何も無いから "

.. .. ..

唯世と先輩のやり取りは右から左に流れていく。オレは今の言葉と、いつぞやに彼女が言ったことが交差する。あのときのは、思い出があるオレが羨ましいってことじゃなかったのか？

Aさんはどういう意味で言ったんだろう。気になるともう集中できない。ただでさえ誰も何も言わなくなってしまったというのに。まったく、先輩のせいだ。

「相馬くん？」

「教室に忘れもんしたから取ってくるわ」

いきなり席を立つから不審に思った藤咲に呼ばれた。嘘だと、分かっているんだろう。けれど気付かないふりをしてくれた。さんきゅーな。

手を止めている面々は横槍を入れはしないけど、もしかしたら察してくれているのかもしれない。

その中には先程までいなかった日奈森もいる。Aさんが外に出ていったから、残りの時間は抜けた穴を埋める意味でも、溜まっている仕事を片付ける方に回ったのだ。

「ダイチ、こはくの気配感じるか？」

「うーん。近くにはいないな」

「学校のどっかには居るだろ。探そう」

ガーディアンでは唯世がいちばん付き合いが長い。同じクラスでもある。オレには先輩っていう仲介者がいたから、たまたま関わる機会が多くなっただけだ。

自分が彼女に言えることなんてたかが知れてる。けれど……

.. .. ..

" 相馬がいてくれてよかった "

.. .. ..

あの人はオレを頼ってくれた。

背を向けていなくなったから、今回オレを求めてるわけではきっとない。それでも自分は、少しでも力になりたいと思うんだ。

.