黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ36)

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遊園地。昔、家族で何度も行ったから。もしかしたら、これもキッカケになるんじゃないかって思った。

だが……そんなことはない。もう過度に期待はしてしない。というか、記憶を失くした直後は散々やった。以前やったことや行った場所を訪れる。それでもAは何も思い出さなかったんだ。

Aが、たった一人の妹が。生きているだけでいいじゃないか。ここ数年は家族みんながそう思っていた。

なのに。兄貴に聞いたが、Aも取り戻すのが怖いことを白状してくれた、というのに。

『Aちゃんの記憶が戻る可能性が高い』

目を覚ましたって知らせを聞いて、まず兄貴が面会へ。そのときは空海が一緒なことと、検査の結果待ちでもあったから。後日に再度訪ねた。今度は兄弟で。

さっきのは開口一番の、担当医の言葉だ。

『普通なら喜ぶところ。だけど本人が望んでいないとなると、これから気をつけないといけないね。彼女は頭がいいから、ただの夢じゃないって内心気づいていると思う』

『花持さん。俺たち、どうすれば……』

『まずは現状を君たちのお父さんに連絡しよう。親戚の方も協力的なんだよね？これが良い方に転ぶのか、悪くなるのか、僕にも正直分からない。でもね、』

Aは思い出す自体は拒絶するも、それ以外では前に進もうとしている。

最近、将来の夢で作文を書いたらしい。勝手に見たときはちょっと照れながら怒っていたけど、オレには意外でもなんでもなかった。ロストだわ〜、が最初の感想。やっぱりAはそうなんだ。

『君たちへの信頼も、決して0じゃない。心配な気持ちは痛いほど分かる。けれどまだ、彼女の中に親子や兄妹関係に対して抵抗感があるなら焦らないこと』

『………っ』

『僕は医療に携わる人間として、絶対大丈夫とか、必ずなんとかするとか。無責任なことは言えない。けれど出来ることはなんでもするつもり。……叶宇先輩には学生時代にとてもお世話になったしね。この借りは今返さないと』

オレたちは先生もとい、花持さんに「今後もよろしくお願いします」の意味を込めて頭を下げた。

彼にキリクはもう見えないはず(・・)だ。けれど視線を外して何も無いだろうところを見た。まるで、オレの近くにいるキリクに気づいているみたいに。

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