黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ34)

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名前だけは知ってたメリーゴーランドとジェットコースターに始まり、バイキングや空中ブランコ、フリーフォールなど。途中からは二織も加わって。三人としゅごキャラ四体とで。久しぶりに全力で楽しんだ気がする。

ミキが「日頃のストレスを忘れるよね」と、あむに言う横で、二織が私に視線を寄越していた。なんだ。だが、訊こうとした声はあむによってかき消される。

私たちが楽しむ様子を傍観していたイクトさんは、あむと話しているようだ。あまりの、普段の彼女と異なる姿に「いいなー、子どもってバカで」と口に出す。

「ちょっ、これはいつもとキャラ変えているんだから忘れてよ。……つーかイクトも乗んなよね！」

「いーよ。オマエら見てるだけでお腹いっぱい……」

「もーーー！絶対乗れ！！」

頑なに見てるだけの彼の手を、勢いのままに掴むあむ。二織はそれに面白がって便乗。イクトさんの背中を押せば、彼は仕方なしに歩き出す。

あむは彼をどこへ連れていくんだ。三人の背中を後から追えば、着いたのはコーヒーカップ。ちなみにこの遊具は、英語圏ではティーカップと呼ぶのが基本らしい。

ちくり。

「……？」

あれ。気の所為、かな。

心臓の辺りに一瞬痛みが走った気がした。けど今はなんともない。この生活が始まってから数日昏睡するって初めてだったし、少し過敏になってるだけだよね……。

私たちは二人一組でひとつのカップへ乗り込んだ。四人乗るには広さが足りない。頑張れば三人ぐらい入りそうな雰囲気はあるが、一人残すのは……ね。何がなんでも乗せたかったあむとイクトさん、そして霧羽家で別れる。

白と水色、そして桃色のリボン。かなりファンシーなカラーリングのカップである。

居心地が悪そうに、よりにもよって……と眉間に皺を寄せるイクトさん。そんな彼を、あむは「だっさー、似合わなーい！」と指をさしてゲラゲラ笑っている。

「この真ん中のハンドル何？」

「回すとカップの回転が早くなんの」

回す？と聞かれたけどそれには首を振った。コーヒーカップはメリーゴーランドみたい。床が回転している。違うのは個々のカップも回転すること。

何が良くて、二織と一緒のカップに乗らなければいけないのか。しかも二人きりで。もう家だよ。今更新たな会話は生まれない。空気が読める彼の後ろには、他の二人が見えた。

なに、話しているんだろう。

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