黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ4)

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「よっ」

「いやいや何でいんの」

「急に顔見たくなって。それに、空海と唯世にも用あったから」

ロイヤルガーデンに着いて最初に気づいたのはA。書類に判を押す手を止めて、こちらを見やる。隣の男性を視界に捉えるなり目をぱちくりさせて言葉を失ったかのように口もあんぐり。あまり見ない顔だ。

対して、男子二人は勢いよく席を立った。再会が嬉しいのか顔を綻ばせて嬉しそう。食い気味に挨拶をしている。特に空海は完全に運動部のノリ。チワスって感じ。

道中に名前を聞いたが、彼は霧羽二織さん。Aのお兄さんで、唯世くんの前のKチェア。また、空海のサッカー部の先輩でもある人。

「ダイチ！」

「おーっ、久しぶりキリク！」

「「イェーイ！！」」

テンションたっか…。ダイチ、そしてシキさんのしゅごキャラ・キリクは波長が異様に合うからと当時から仲が良かったみたいだ。ハイタッチしてる。

あ、呼び方はね。本人が「シキ」と呼んでいいって言ってくれたから。苗字＋さん付けで呼ばれると堅苦しいんだって。

ふと階段の先を見上げると、置いてけぼりになっているなでしことややが目に入る。「誰々？」に「Aちゃんの…」と何か話しているのが聞こえたから、なでしこもシキさんのことを知ってるらしい。

「連絡って、メールでいいじゃん。この授業参観みたいな空気嫌なんだけど。帰って」

「そんな冷たいこと言うなよー」

「家で飽きるほど見てる顔をなんで外でも見たくなるの。寂しがり屋なの？」

「……あーもー、お前朝元気なかったのにもう平気そうじゃん。兄ちゃんは授業に集中できなかったって言うのに…」

そうなの？あたしはAを見る。何故か同じクラスのはずの唯世くんもそうした。横顔からは動じてないように見えたけど、彼女の中ではふつふつと何か思い当たる節でもあったらしい。

シキさんの脇をすり抜けてロイヤルガーデンの出入口の方へ歩を進める。どこいくの、と唯世くんが背中に呼びかけると「見回り」と短くそれだけ。

こはくも後を着いていく。扉の閉まる音が冷たく響くと、彼は一息をついた。

「…先輩、Aさんのことだから隠したかったんでは。そりゃあ知ったらオレたちも心配するけど、あれ大丈夫ですか？」

「ん、カミングアウトしたことに気が触れたわけじゃないから平気だよ」

「え？」

てっきり、あたしも空海と同じことを思ったのに。身内が言うにそれは違うらしい。

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