黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ28)

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二人に言えないなら、もう誰もいない。あたしだけ。……なら、もうしょうがないよ。我慢してよね。

あたしはその場にしゃがんでスクールバッグを開けた。テキストを片手で寄せて、底に沈んでいたハンカチを取り出す。

そして、血を拭うためにそっと押し当てる。イクトは痛むのか若干顔をひきつらせた。その後、威嚇する猫のようにあたしを睨む。

「かっこ悪。その辺で喧嘩なんて、ほんと野良猫じゃん」

「……………」

イクトは何も言わない。さっきまでは目障りみたいにしていたのに。でもまだ怖い。拒まれるんじゃないか。そう思うと手が震えてしまう。

あたしがこんなに近づいていいか分からない。もしイクトがシキさんやAを許したなら、こんなこと思わないでいいのに。どうすれば良いのか分かるはずなのに。

半ば上の空で口許を見ていた。だから「いっ！……て」と声を上げたのをすごく驚いた。体がびくりと揺れる。どうしようどうしよう。プチパニック状態。

だが、ふいに右の手首が引っ張られる。気づいたときには鼻先が触れそうなくらいにイクトの顔があった。

「嘘」

「……な、」

これは見覚えがある。いつぞやに揶揄われたときと同じ顔だ。……なんだもう、焦る。あたしの心配を軽んじた。もーーー！！馬鹿じゃんっ。

ポカポカと頭をグーで連打。……本気じゃないよ？例えるなら肩たたきくらいの力。

痛い痛い、やばいやばい。イクトはそう言うと、急に体の力が抜けたようにあたしの方に倒れてくる。頭の重みがむき出しのあたしの膝に乗ったら顔が熱くなった。

「ちょっ……重い、」

「怪我人」

「～～～っ」

イクトは目を閉じたままボソリ。肩を揺らしても全然動こうとしない。ちょっと、何この状況。いわゆる膝枕。……膝痛いし、髪の毛もくすぐったいんですけど。

指で梳いたら引っかからず毛先まで抜けていく。髪まで猫っ毛…？一本一本が細くて柔らかい。ふんわりしてる。イクトはそれでも横たわったままだ。なんか本当、でっかいネコみたい。

いっつもこうなら、ちょっとは可愛いのにな。……

「工□いとこ触んな」

「わっ。は……！？」

「耳、弱いの俺。オマエと一緒」

「っ……」

まったくもう。ひとつ良いと思ったらすぐこれ。あたしはイクトの頭を少しだけ持ち上げる。膝を避けてから手を離した。

勝手に膝を使っておいてどこは触るなとか、あたしも耳が弱いとか何なの。違うし、びっくりしただけだしっ！

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