黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ27)

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良い、悪い。どっちなの？バツたまを壊した、誰かのこころを握りつぶした。最低な行為をしたのに。敵だと言いつつ何故か助けてくれる。

わっかんない奴……。けど、あのバイオリンはもう一回聴いてみたいかな。優しくて綺麗だったから。なんてね。

いつもの通学路。駅の方から歩いてくる人は首にマフラーを巻いていたり、タイツにブーツを合わせている。寒さがもう、すぐそこまで迫っている。

うう……ちょっと冷えてきた。左手をブレザーのポケットにつっこむ。使い捨てのカイロ、持ってきてよかった。

「はあっ……はぁ…。怖かったぁ～……」

「あの男の子、大丈夫かな。おかげで逃げてこられたけど……」

「心配ないよ、きっと。強かったもん……猫みたいに身が軽くて」

「でも……チラッと見えたけど、彼奴らナイフ持ってたような…」

「う……嘘ぉ…」

冬の装いをした女の人たちとすれ違う。イクトのことをさっきまで考えていたから、その話の内容に思わず反応して振り返る。

……男の子、猫、身軽。いやいや、まさか……ね。

でも……すごく焦っているような、心配してるような。彼女たちの様子に胸が騒いだ。そして、あたしは見つけてしまう。薄暗い路地裏。手前に、血が擦れた痕を。

闇の先には壁に体重を預けてへたり込んだイクトがいた。名前を呼ぶと、あいつは顔を上げる。頬や唇の端にも濃い赤。ドキ、と心臓の音が大きく聞こえた。

「……なんだ、オマエか」

「け……怪我してんの……？」

「……………。うぜぇな、消えろ」

左の肘。制服ごと切られたの……！？ヨルが必死な顔でペロペロ傷を舐めていた。

イクトがどんな奴か分からない。けれど、放っておけない。あたしのことは呼んでいないようでそっぽを向かれた。そんな……今から知らんぷりなんてできないよ。夢見も悪くなる。

じゃあせめて、これを。あたしは携帯を取り出す。

「……？何してんだ」

「あたしじゃ嫌なんでしょ。なら、Aに連絡してシキさんに来てもr」

「っ、やめろ！」

こんなに強い声、初めて聞いた。怒ってる。

良かれと思ってやろうとしたのに。迷惑だったらしい。

「あいつらだけには言うな」

「でも……！」

「頼む」

そんなふうに言われたら何も言えない。友達のシキさん、それだけと言うA。ううん、きっとまだある。だって、覇気が戻ったように真剣な目に変わったもん。

心配かけたくない。そんな想いが伝わってくる。

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