黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ22)

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172# 猫かぶりページ22

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平日の朝。月詠イクトはまだ家にいた。制服までは着替えたものの直前で行く気がなくなったらしい。自室のベッドに寝転がっていた。のらりくらり気まぐれな猫っぽい。

いつも世話をやく友人が来るはずだ。しかし今日は、朝から委員会の集まりがあるからと迎えに来なかったのだ。

「イークトッ。また学校サボりか〜？」

「…………」

「オレ暇だってば、にゃー！」

無邪気な子猫は、布団の上をごろごろと転げまわる。余程元気が有り余っているらしい。

対してたまごの持ち主は口を閉じたまま。何も無い白い天井だけを見つめていた。彼の表情はとてもつまらなそう。しかし、ヨルの問いかけを無視する彼だが、部屋の外からのノック音にはピクリと瞼が上がった。

「イクトさん……部屋にいるの？」

返事を待たずして自室のドアが開かれる。ノックの主はもう一度名前を呼んだ。でも、期待は叶わない。部屋はもぬけの殻。窓は開け放しになっており、冷たい風が舞い込む。

彼はどこへ消えたのか。正解は屋根の上。部屋の真上だった。どうにか顔を合わせるのを回避したイクトの目には、敵意が滲んでいる。

そんな彼の思考を奪ったのは、数年来の付き合いの……

「なんだ、いるんじゃん」

男は月詠家の前で手を振っていて。気づいたイクトは躊躇なく屋根からヒラリと飛び降りる。

イクトの方が少し背が高い。訪ねてきた男は、現在中学一年生。彼とは三歳差。しかし平均を優に超える身長で、成長期もまだまだこれからという感じ。

「歌唄センパイが言ってたよ〜？幾斗センパイがメールの返信してくれないって。三条サンもご機嫌取りに苦労してるみたいだし、たまには返したらどう？」

「……そんなこと言いにわざわざ？暇か？」

「今日はひと月ぶりのまともな休み。これから学校だよ。センパイは行かないの？」

ニコニコの効果音が永遠に聞こえるような笑み。イースターの裏……つまりエンブリオを捜索する者たちにとっては、なんともうざったいものだった。それはイクトにも然り。

思い出すのは二階堂悠。けれど、彼は比較するにも至らない。ヘラヘラしてるように見えるが、この男は恐ろしいモノを味方につけているからだ。

「気分じゃない。……お前は？真面目に勉強しに行くの？」

「まさか。そっちは適当で、目的はエンブリオ探し」

作り笑顔は最後まで張り付いたまま。男は自身のしゅごキャラに一声かければ、行ってしまった。

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