黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ16)

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目が覚めたら時刻は7時を過ぎた頃。よかった、ちゃんと起きれた。看護師さんが病棟を回る時間帯だ。夜勤の人達に私のことが伝わっているのなら直にこの病室にも来るだろう。

よいしょ、と横たえた足をベッドから床へ垂らす。昨夜と同じように窓へ歩み寄り鍵を開けた。ここと外を隔てたガラスを片側へ重ねると冷たい空気が入ってくる。

「Aちゃん、おはよう」

「！おはようございます」

背後から、昨夜とは違う女性の声。振り返った先には看護師さん。外に意識が向いていて入口が開いたことに気づかなかったようだ。

挨拶と再会の会話の後、今日の予定について話す。まず朝食………は、点滴してるから無し。うん、そうだよね。そもそも数日食べてないからいきなり食事も難しい。点滴が外れたら前みたいに流動食で少しずつ練習するらしい。

日中はいくつかの検査。記憶の確認とかカウンセリングが主だろう。脳の検査は病院に運ばれた直後に散々やっていると思う。

「じゃあ時間になったら声かけるね。……あ、それとお兄さんから。お昼の時間に面会に来るって連絡来てたよ」

「はーい。ありがとうございます」

お昼……楽くんかな？二織は学校あるもんね。

彼女が退室してまた静かになる。ふと、ロストのたまごがあった方を見たけれど彼は既にいなくなっていた。早起きだなあ。こっちは挨拶も無しか。

やれやれ、と一息。ベッドの脇の小さな棚に私の携帯が置いてあったが大量のメッセージにひとつひとつ目を通す気力はない。みんな、心配して送ってくれただろうけど、なんて返せばいいのか分からないのが本音だった。

結局誰々から来たのかスクロールで流し見るだけで画面を真っ暗に。反射で映った顔はちょっと苦しそう。

あーあ、不安が顔に出てる。検査の時間になるまでになんとかしなきゃ。…と思い、外の方にグリンと首を捻る。すると視界に入ったものが信じられなくて目を疑った。

しっかりかち合ったその目は、そらすことなく私を見つめている。消えてしまった街灯のてっぺんに、恐れることなく立てる人なんて一人しか知らない。

目をぱちくりさせながら、窓枠から点滴していない方で半身を乗り出した。

「……なにしてるの…？」

「本当。何してんだろうな、俺……」

「は？」

いやいや、聞きたいのはこっちだ。なのに彼は自分の行動に疑問を持つかのような口ぶり。

とりあえず……中に入ります？イクトさん。

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