黒ネコさんは悪い人じゃない④【しゅごキャラ】 (ページ12)

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…………

…………………あれ？私どうしたんだっけ。

よく分からないまま身体を起こす。私はベンチで無防備に眠りこけていたのか？ここは………公園？

辺りを見回すと静かな住宅街が視界に移る。気温が高いのか地面から陽炎が伸びて揺らいでいた。でも、不思議とそこまでの暑さは感じない。

首を傾げていると子どもの声が近づく。すると数人の男の子、それに続いて女の子が公園に入ってきた。

「か、返してよっ…！」

「だからここまで取りに来いって言ったじゃねーか」

そうだそうだ。周りが女の子をせめるように言う。

幼少期あるある。これ、反動形成っていうんだって。無意識で気持ちや感情を抑圧して表現できなくなるの。で、その反動として正反対の行動を取るらしい。

ちょっかいかけられる方からしたら、逆に好感度マイナスなんだけどね……。よいしょ、と立ち上がる。その、女の子のものを握りしめている彼から奪い取ろうと手を伸ばした。…が、

「…ん？」

私の手は空を切る。え、というか。すり抜けた？

これ……夢？それも明晰夢か。だったらおかしい。明晰夢ならば、むしろ自分の思い通りに変化させることもできると聞いたことがある。なのに。

頭をフル回転させて今の状態を整理する私の身体は、今度は子どもたちをすり抜ける。まだ続くやり取りに目線をやると、ひとつ気になることが。

「はぁ、はぁ…もうちょっと…！」

ジジッ「…くん、パス！」

「あっ、」

返してあげなよ。好きな子を困らせてそんなに楽しいか。じゃなくて。そうだけど今は違くて。

中心にいる男の子の名前が呼ばれたとき、ノイズのような耳障りな音にかき消される。よく聞こえなかった。

その後、何度か彼らは互いの名前を呼んだ。取り巻きくん達の名前はちゃんと聞こえた。女の子も。彼女、私と同じ名前なんだな。でも、彼だけ。真ん中の男の子だけ、ビリビリと機械音が入る。

「君はいったい………、誰なのかな」

ぽつり、飾りなく疑問が落ちる。これもちょっとおかしい。

"誰"？多くの場合、知らない人に対して使う言葉だ。でも今の私は……まるで以前から知るような、初めて見た感じではないような。

キィィンッ

「痛っ」

今度は金属が細く響く音が聞こえる。なんていうか、黒板を引っ掻いたみたいな不快感。

目も開けていられない。次第に声も遠ざかる。待って、もう少し…。私の想いも虚しく、目の前が真っ暗になった。

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