黒ネコさんは悪い人じゃない②【しゅごキャラ】 (ページ48)

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「え、歌唄ちゃんとの関係？勿論うちのしゅごキャラに聞いたんだよ。イクトさんもあの誕生日会の日に話したでしょ。」

「イクトさんはあの子の音楽をべた褒めしてたけど、個人的にはあまり深入りしない方がいいよ。…って言っても、遅いか。あいつは気配を消すのが上手いから、私の周辺の人達の情報も秘密も既に入手してる。」

何か知っているのは当然だが。だったら、と開き直った様子で怪しく笑むA。油断出来ないのは分かりきっていたことだ。こいつはガーディアンで、俺はイースター。立っている場所が違う。

歌唄との関係は別に隠していることじゃない。唯世なんかは既に知っている。俺が気になったのはもっと別のところにある。どうしてそんなことまで教えてくれるのか、だ。

「イクトさんは踏み込まれるの嫌いでしょ？」

「………。」

「手遅れだけど、このまま黙ってるのもフェアじゃないと思ったから話しただけ。」

店を出て、人通りが無い住宅街を並んで歩く。結局歌ったのはあの一曲だけ。今度こそ本当に用事は済んだと言って、ドリンク一杯で部屋を出たのだ。

心の内を吐露させたにも関わらず、まだAは取っ付き難い。もしかしたら、普段俺に向ける表情も愛想笑いに含まれたのかもしれない。涙を見られたから吹っ切ったのか。

「なあ、」

◇

30cm弱離れている私たちの背丈は、傍から見れば凸凹というやつだ。まあこの人は猫背で、私の足元もローヒールだから多少縮まってると思うけど。

家に送ると言うイクトさんが、急に歩みを止めたから反射的に立ち止まる。見上げたとき、同じく見下ろすイクトさんと至近距離で目が合った。不器用な彼はこういうことになっても照れるとかが皆無である。ちなみに私も最初だけ近いと思うだけで、特に感想はない。

何？と首を傾げれば、綺麗な顔はちょっと離れた。お、自重を覚えたか……なんて馬鹿なこと考えてる場合じゃない。呼んだのに全然話そうとしないのは何故だ。

「あのさ、」

「うん。」

「無理して笑うのを俺がやめろなんて言わないし言えない。それは、Aが自分を守るためにやってることだろうし。」

「…うん。」

「けど、もう俺には変に笑わなくていい。そのままのお前を見ても可哀想だなんて絶対思わねえから。…約束する。」

「！」

「ま、好きにしろ。信じるもどうするも任せる。」

「へ……。」

嫌に間抜けな声が出た。

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