黒ネコさんは悪い人じゃない②【しゅごキャラ】 (ページ42)

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◆(※シリアス)

それからAは驚くほど淡々と話した。事情を先に知っていた空海や唯世くん、なでしこもたまに口を挟みながら時間が進む。

早速さっきの、歳不相応でどうして初等部にいるのか聞いた。すると、また驚くことを言われて絶句する。

「幼稚園のときに事故で頭を打ったの。一年以上昏睡してたって聞いてる。」

「……！？A…、それ大丈夫だったの？」

「全然よ、だって記憶も吹っ飛んだし。」

そんなの、漫画やテレビの世界だけの話だと思ってた。同級生なのに、友達なのに。Aは頼れるお姉さんのような子だと思ってた。でも実際は二つ上の本当にお姉さんで、ここにいる誰よりも先に生まれていて。

だが、されど二歳差。そんなに何年も離れていないのに夢にも思わない体験をしていた。想像が出来なくて何の言葉も浮かばない。ややが心配そうに深追いしたら更に衝撃的なことを返されて、一時沈黙した。

「自分の名前も家族も親しい人も、これに合わせて日常生活の動作も。不思議でしょ？言葉は分かるのにそれ以外の全てを忘れちゃったの。」

「こはくは事故以前に孵化してたらしいけど、こはくのことも覚えていなかった。何も分からない私は不安に押しつぶされそうになった。……でも、そんな私を一番傍で支えてくれたのがママだった。」

「勿論兄や父にも沢山愛情をもらった。そのおかげで今こうして学校に通えてるし、人間関係も比較的上手くやれてる…と思う。まあ無意識に頑張りすぎてたまに倒れるんだけど。」

Aは苦笑いをして、一旦ピリオドを打つ。彼女の空になったティーカップに、なでしこがコポポ…と紅茶を注いだ。

そして唯世くんが補足する。倒れ(そうさせ)ないためにも、自分たち三人はフォローしたり悩みがあったら吐き出させたりしてると。勿論それで足りないのなんかしょっちゅうだ、と語る。

「わたしたちのこともっと頼ってほしいのに。」

「いや、歳下頼るほどプライド低くないし。」

「そんなのへし折ってください。ぼくたち、そんなに頼りないですか？」

「百歩譲って相馬はともかく、辺里となでしこは頼りない。……って、前にロストが言ってた。」

ここにはいないしゅごキャラの名前を出せば、凍りついたように言葉を詰まらせる唯世くんとなでしこ。二人とも、何か思い当たることがあるのか、それ以上Aに訪ねることはせず。次の話になる。

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