黒ネコさんは悪い人じゃない②【しゅごキャラ】 (ページ39)

今日:23 hit、昨日:43 hit、合計:94,236 hit

089 ページ39

◇

キャラなりを試みたあむが青い光に包まれた。ミキは姫川さんのことを気にしていた。私と同じで、彼女を救いたいと思っている。

“キャラなり、アミュレットスペード！！”

ハンプティ･ロックが新たな可能性を示すように輝きだす。汚れを知らなそうなそれは、私の中の小さくなった暗い部分まで届く。この光は姫川さんの✕キャラを浄化するためだ。私が手を伸ばしても触れられるものじゃない……のに。

理論で考える私らしくない行動だった。焦りと戦意を一度忘れた。この輝きなら彼女だけじゃなく、私のどうしようもない劣等感とかそういうのを浄化してくれるかもしれない、と思ったのだ。

そんな私を現実に引き戻したのは✕キャラを介して伝わる、姫川さんの本音。

“ママ…、バレエ辞めちゃうの？あんなに綺麗だったのに。”

“一瞬で皆壊れて終わり…、わたしも同じだ。ママみたいに…、”

そんなこと、ない。なんて、言えるわけない。私は姫川さんの努力を知らないし、他人の言葉なんて余程の力強さがなければ相手に響かない。自分はそのことを嫌になるほど理解していて、その強さがないことも自覚している。

でも、そんなこと気にしてる場合じゃないか。勝手にハードルの高さを決めて、挑戦することもしないなんて……ただ逃げてるだけだ。嫌われたくないというエゴ。

「うじうじしてたら、何か変わるわけ？その方が無駄でしょ。」

「！！？」

「……A？」

姫川さんを少し離れたところに移動し、前線に出た。✕キャラの攻撃は鞭で捌いてジリジリと距離を詰める。

硝子が割れてないところに一瞬目が行く。はは、そういえばなでしこが『Aちゃんの怒った顔は怖い』って言ってたっけ。自分でどんな顔してるのかなんて早々見る機会ないもんな。そこにいたのは、わざと上げていた口角が振りと思うような、真顔の自分だった。

「ちょっとヘマしただけで全部終いだなんてどうして言えるの？ママさんのそれまでの時間は、たった一度の失敗で無駄と言えるほど軽くない。それは君が一番分かってるだろ。表舞台でも裏で頑張る姿も、最前列で見てたんだから。」

「……。」

「あむの第一印象は良くなかったようだけど、踊ってる君を見て悔しそうだった。私もそう、綺麗でカッコよくて目を奪われた。それに、転んでばかりのややも我儘言わずに立ち上がってる。」

言いたいことを言って、感情の熱が冷えていくような気がした。

.